侵攻⑤
任務を終えたヒュンフと霞はレオンの下へ帰還し報告を行っていた。
だが当のレオンはと言えば、その報告を上の空で聞いている。何故なら霞の大きな胸に視線が釘付けになっていたからだ。
霞は跪いていることもあり、斜め上から見下ろしているレオンは、どうしても胸の谷間に目がいってしまう。
忍装束により窮屈に抑えられた霞の胸は、今にも零れ落ちんばかりである。
(何あの巨乳?どうなってんの?胸の谷間とか超やばいんですけど……)
ヒュンフの報告が終わると、霞は恥ずかしそうに身悶えしながらレオンへの報告を行っていた。レオンは適当に相槌を打っているが話は全く耳に入ってこない。
「――と、なっております。月が出ている間、城壁の獣人は崩れ落ちることはございません。私からの報告は以上でございます」
(召喚した時に胸が大きいとは思っていたが、まさかこれほどとは……。あの胸を強調する忍装束のせいもあるんだろうけど、それにしてもこれは見事だ)
霞の胸をぼんやりと眺めるレオンを見て、ツヴァイは自分の胸に視線を落とした。
そこには本来あるべき女性の象徴たる起伏が全くない。絶壁の胸を再確認してツヴァイは表情を曇らせた。
創造主であるレオンの創り出した体が気に入らないわけではない、寧ろ誇りにさえ思う。
だが先程からのレオンの態度は明らかに大きな胸を意識するものだ。ツヴァイは自分の存在を否定された気がして悲しみが込み上げてくる。
「レオン様は大きな胸がお好きなのですか?」
傍から聞こえる可愛らしい声に、レオンの心臓はビクッ!と脈打つ。そんな言葉だけが耳に届くのは、やましい気持ちがあるからだろう。
レオンは声の主に視線を向けると、ツヴァイが涙目で見上げていた。ヒュンフや霞に視線を向けると、じっとこちらの動向を覗っている。
(あれ?なんかやばいかも……)
「ああ、その、あれだ。私は大きいから女性の胸を見ていたわけではない。大きさに関わらず、女性の胸は素晴らしいものだ」
レオンは咄嗟に誤魔化そうとするも、全く誤魔化しきれていない。
寧ろ、その言動はツヴァイの言葉に尾ひれをつけて助長するものだ。言ってから焦るも既に手遅れである。
(なに言ってんだ俺!これじゃあ、胸の大きさに関わらず、いつも女の胸を見てる唯の変態じゃないか!)
ツヴァイは自分の胸をペタペタ触って確かめる。
もはやこれは女性の胸なのかと、自分でさえも疑問に思う絶壁ぶりだ。
ツヴァイの年齢は十歳。年齢から見れば年相応の体なのだが、それでも腑に落ちない点もある。
それは全従者の中で自分の胸が一番小さいことだ。同い年の
ツヴァイは縋るような気持ちでレオンに尋ねた。
「レオン様、私は胸が全くありません。これでも素晴らしいのでしょうか?」
レオンは大きな胸が好きだが小さな胸が嫌いというわけではない。
寧ろ、小さな胸も大好きである。だからこそレオンはツヴァイのような従者を創ったのだから。
先程レオンの口から出た言葉は全て真実。詰まる所、レオンは大きさに関わらず、女性の胸が大好きなのだ。
涙ぐむツヴァイにレオンはどうしたものかと頭を悩ませる。
「そ、そうだな。ツヴァイの胸も素晴らしいぞ。何せお前は私が創り出した従者だしな」
自分でロリコンですと断言しているようなものだが、よい言葉も浮かばずレオンはありのままを答えた。
知らない人間が聞いたらドン引きするだろうが、ツヴァイの反応は違っていた。先程までの暗い表情が嘘のように笑みで溢れている。
「レオン様にそのように仰っていただけるとは、このツヴァイこれ以上の喜びはございません」
今まで抱いていた不安が解消されたことで、ツヴァイは瞳を輝かせながらレオンのことを見つめていた。
レオンはそんなツヴァイの頭を優しく撫でる。
ツヴァイの頭が撫で易い位置にあるためか、それとも子供の容姿をしているせいか、どうも事あるごとに自然と頭を撫でていた。
その様子をヒュンフと霞は羨望の眼差しで見つめる。あわよくば自分もと、二人は密かに胸を強調し、レオンを誘惑するのであった。
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