北へ⑬
レオンらは城壁を降りると、ポーターやサラマンダーと合流し、メチルの街への帰路に着いた。
街道沿いの襲われた村には既に兵士が入っており、亡くなった村人の埋葬が厳かに進められていた。
そこには五体満足な遺体は一つもない。酷い殺され方に、作業をする兵士は悲痛に顔を歪ませている。
助けてやれなかったことを悔いているのだろうか、それとも家族や友人を見つけたのだろうか、中には遺体の前で泣き崩れる兵士も大勢いた。
レオンたちは街道から村を遠目に見るだけで近づくことはない。
立ち寄っても辛い思いをするだけ、今のレオンたちには何もできないのだから。
一行は獣人や魔物と遭遇することもなく、予定通り三日の行程でメチルの街に戻ってきていた。
どうやらベルカナンからの早馬で、知らせは既に冒険者ギルドへ届いていたらしい。
レオンらが冒険者ギルドに入ると一斉に注目の的になった。
名も知らぬ大勢の冒険者がミハイルを取り囲み、口々にベルカナンでのことを訪ねてくる。
身動きできずにミハイルが困っていると、その様子にベティが大声を上げた。
「まだギルドへの報告が残ってんだ!邪魔すんじゃねぇよ!ぶっ飛ばされたいのか!!」
流石に格上の冒険者を怒らせては不味いと、ベティの声で冒険者が遠のいていく。
ミハイルはベティに一言礼を言うとカウンターへと足を向けた。そこでは満面の笑みを浮かべたエミーがミハイルを出迎える。
「ミハイルさん、お疲れ様です。ベルカナンから知らせは届いています。何でも街を包囲していた獣人たちを、全て追い払ったと伺いました。流石はAランクの冒険者ですね」
「僕がやったわけではありません。全てレオンさんの騎乗魔獣がやったことです。それに獣人は追い払ったのではなく、全滅させたんですよ」
「全滅?全て殺したということでしょうか?」
「そうです。サラマンダーは強いですね。僕も驚きましたよ」
「え?ですが獣人の数は一万以上と伺っておりますが……」
「そうですね。僕らが見たのもそのくらいの数でした」
「一万の獣人を全滅?」
「ええ、凄かったですよ」
エミーは外に視線を向けて、窓越しにサラマンダーを見る。
確かに大きい体ではあるが、一万もの軍勢を殺せるようには、とても思えなかった。
仮に殺せるにしても時間は掛かるだろうし、その間にいくらなんでも獣人たちも逃げるだろう。
エミーはミハイルの冗談かと苦笑する。
「知らせは届いているので報告は不要です。報酬はご用意していますのでお受け取り下さい。包囲していた獣人の件もございます。後日、追加報酬が支払われるかもしれません」
「分かりました。その時は連絡をください」
ミハイルは笑顔で告げると、カウンターの上に置かれた袋に手を伸ばした。
硬貨のぶつかり合う心地よい音が、レオンの耳にも聞こえてくる。
ギルドの片隅に移動すると、レオンはミハイルから半分の硬貨を受け取り眉間に皺を寄せた。
「命懸けと言う割に、報酬は思った程でもないな」
「えっ?そうですか?金貨10枚は高額だと思うのですが」
(まぁ、調査依頼ということだし、報酬もこんなものか……)
「確かに調査依頼では高いのかもな。では私は屋敷に戻る。世話になったなミハイル」
「こちらこそ。また何かあったら手を貸してください」
「うむ。暇だったらな」
レオンは踵を返し、フィーアと冒険者ギルドを後にした。
冒険者にはレオンが貴族であるとの噂が流れてるため、誰も話しかける者はいない。
貴族を怒らせると碌な事にならないのは、この国の人間であれば誰でも知っている常識である。
酷い時には
そのため、レオンとフィーアが立ち去る様子を、冒険者たちは冷ややかな視線で見送っていた。
その後、話を聞こうとミハイルの周りに冒険者が押し寄せたのは必然と言えよう。
詰め寄る冒険者にミハイルは深い溜息を漏らす。
(早く帰って休みたいのに……。なんで僕のところにだけ人が集まるんだ?いい加減にしてくれないかな……)
普段であれば愛想よく受け答えするのだが、今のミハイルは肉体的な疲れ以上に、精神的に参っていた。
山のような死体を見たこともあり、早く休んで何もかも忘れたいところに質問攻めである。
人に好かれるのも考えものだと、ミハイルはがっくりと肩を落としていた。
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サラマンダー 「僕も人に好かれたい」
粗茶 「なんでだよ!人に好かれる前にトカゲに好かれろよ!」
サラマンダー 「トカゲに好かれても嬉しくないかな。僕サラマンダーだし」
粗茶 「黙れよ!サラマンダー(肉)!」
サラマンダー 「酷いよぉおおお!!」
粗茶 「
サラマンダー 「僕、先輩になるんだね!サラマンダー先輩って呼ばれるのかな?」
粗茶 「何夢見てんの?トカゲはペットの餌だよ」
サラマンダー 「ウッソーン!!∑(;゚ω゚ノ)ノ」
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