冒険者②
「なるほどな。それでドラゴンの討伐に人が群がっていたのか」
「えっ?いや、逆ですよ。ドラゴンの討伐は上位ランクの冒険者でも命懸けです。一般の冒険者は見向きもしません」
「ん?おかしいではないか?ではなぜ掲示板の前に人が群がっていたのだ?」
「あれは依頼を受けたくても受けられない冒険者です。外に出るのは危険なので、街中の依頼が来るまで張り込んでいるんですよ」
「ちょっと待て!では、サ……、ドラゴンは放置するのか?」
ニナは「まさか」と、乾いた笑い声を上げた。
「流石に放置はいたしません。上位ランクの冒険者が集まり次第、討伐に向かわれます」
(上位ランクの冒険者か……。この世界独自の魔法やスキルが見られるかも知れないな)
「ドラゴン討伐に私たちも参加できるか?」
「それは無理かと……。初心者が入ると
「報酬は必要ない。それに私たちは二人とも魔法が使える。後方支援をするだけなら問題はないはずだ」
「それでしたら確かに……。参加できるかは分かりませんが、話だけはしてみます」
「よろしく頼む」
話しをしている間に書類は完成したのだろう。ニナは書類を持って部屋を出て行った。
暫くすると、金属の
冒険者になる際に必ず行われる説明なのだとか。
ギルドについて長々しい説明が行われたが、要点を言えば、依頼の最中に命を失っても、冒険者ギルドは責任を負わないということ。
全ての依頼は自己責任の元に行われるという内容であった。
その他にも、冒険者のランクのことや依頼の受け方など、多岐に渡って丁寧に説明が行われた。
「――と、いうわけです。ここまでに質問はございますか?」
(なるほど。要は冒険者ギルドは一切責任を取らない。仲間が死のうが手足を失おうが、保証は何もないと言いたいわけだな)
「問題ない。話を続けてくれ」
「では最後に、先ほど渡した金属の
ニナの助言に従い、レオンは
利き腕に嵌めた場合、激しい戦闘の際に外れてしまう恐れがあるとのこと。
レオンとフィーアが
「これまでに質問はございますか?」
「問題ない」
「では、説明はこれで終了いたします。上位ランクの冒険者が集まりましたら、お二人のことを話してみますね。それまでこの部屋でお待ちいただけますか?」
「無論構わん。無理を言っているのはこちらだしな」
「時間が掛かるかもしれません。後でお茶をお持ちします」
「すまないな」
ニナは微笑み返し部屋を後にする。
レオンはその後ろ姿を見送り、
それは、鉄で出来た何の
(最低のGランクか……。俺だったら初心者は絶対に断る。それを考慮するなら、ドラゴン討伐に参加できる可能性は低いのかもしれない。尤も、透明化の魔法で尾行することもできるんだが――どうしたもんかな……)
そう、討伐に参加せずとも、近くで冒険者を観察する方法はいくつかあった。
しかし、冒険者がそれらの魔法を看破しないとも限らない。隠れて高みの見物をしても、見つかる可能性は十分にある。
もし見つかろうものなら、怪しまれるのは勿論のこと、その言い訳に困るのも明白である。
討伐に参加し、堂々と冒険者の側にいることが最良であった。
そのためレオンは切に願う。
出来ればドラゴン討伐に参加できますように、と。
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