街⑬

 堪らず男たちは叫び声を上げる。


「何故だ!魔法は当たった筈だ!」

「魔法に対する完全耐性?何らかの魔道具マジックアイテムか!」

「落ち着け!魔道具マジックアイテムにも限界がある。そう何度も防ぐことはできない筈だ。奴が倒れるまで魔法を撃ち続けろ!」


 リーダーらしき男の号令により、再び男たちは魔法の矢マジックアローを唱える。

 しかも、今度は立て続けに連続で魔法が放たれた。雨のように降り注ぐ魔法の矢を受けながら、レオンは瞳を見開き驚愕の表情で立ち尽くす。


(馬鹿な!?同じ魔法を短時間で唱えるなんて有り得ない!)


 それは1分にも及んだろうか。男たちにも疲労の色が出始め、遂には魔法を唱えることができなくなる。

 魔法の矢が途切れ、男たちが肩で息をする中、静かな草原にレオンの声が響き渡った。


「何をした?どうやって再詠唱時間リキャストタイムを無効化した!」


 しかし、男たちは答えない。そんなことよりも、これからどうするべきかを模索していた。

 毒も魔法も効かない。投げナイフを受け止めた手腕から、近接戦闘でも勝ち目は薄いと予想できる。

 こうなると残された手段は一つだけ。

 男たちは目配せをすると、レオンに背を向け一斉に走り出す。


「そうか、答える気は無いということか……。だが――逃げられると思うなよ![深き眠りディープスリープ]」


 男の一人が突然蹌踉よろめきだす。そして、そのまま地面に倒れ込み動かなくなった。

 残りの男たちは、その様子を瞳の端で確認して舌打ちをする。だが、レオンの追撃はまだ終わらない。

 レオンは悠然と歩きながら、視線だけを動かし魔法を唱える。


「[魂の拘束ソウルバインド]」


 もう一人の男が気を失い、その場に崩れ落ちた。

 残るはただ一人。レオンは遠ざかる男に視線を移してほくそ笑む。


「無駄なことを!〈次元移動ディメンションムーブ〉」


 草原を全力で疾走する男の前に、突如としてレオンが姿を現す。

 男は慌てて進路を変えようとするが既に遅い。

 レオンの手は霞むような速度で男の顔を捉えると、そのまま鷲掴みにして動きを抑え込んだ。


「お前には色々と聞きたいことがある。洗いざらい話してもらうぞ![支配ドミネート]」


 途端に男の瞳は虚ろになり、手は力なく垂れ下がる。

 男が支配下に入ったことを確認すると、レオンは手を離して質問を投げかけた。


「なぜ私たちを狙う?誰かに頼まれたのか?」

「はい。ビストール様のご命令で女をさらってこいと」

「ビストール?それがお前たちの――」


 男から経緯いきさつを聞きいて、レオンは眉間に皺を寄せた。


(つまり、そのシリウスが定期的に女をさらわせているというわけか。そして、玩具おもちゃと称して死ぬまで遊ぶと……。はぁ、――フィーアが傍にいなくて良かった。こんな話は聞かせられないな)


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