街⑪

 レオンが夜の街を散策していると、不意に耳元に言葉が飛び込んできた。


『レオン様、少しよろしいでしょうか?』


(ヒュンフ?通話機能を使うなんて珍しいな)


『どうした?』

『後をつける者がいます。数は4人、物腰や気配から恐らく暗殺者かと。始末してもよろしいでしょうか?』


(暗殺者?命を狙われる覚えはないが……)


『まて!まだ殺すな。そいつらの大凡おおよそのレベルは分かるか?』

『レベルは20から25の間と思われます』


(弱いな。プレイヤーではないか……)


『我々を狙う理由も気になる。ヒュンフは手を出すな』

『畏まりました。何かあれば、またご連絡いたします』


 レオンは軽く頷くと、肩越しに後ろの様子を覗う。

 数人の人間が視界に入るが、素人のレオンでは誰が尾行しているのか特定はできない。

 それに、街中では無関係の人間を巻き込む恐れもあり、どうしても人目を集めてしまう。


(さて、捕えるにしても街中では目立ってしまう。一旦街を出るか)


 レオンはそのまま歩き続け、街の東門から外に出る。

 フィーアも尾行には気付いているらしく、時折後ろを気にする仕草を見せた。

 人気のない街道から更に外れ、暗闇の中を突き進みながら、レオンは領域探知エリアサーチの魔法で周囲の反応を確認した。

 頭の中に映し出されたのは、レオン自身とフィーアの反応。そして、二人から少し離れて4人の反応。ヒュンフは完全に姿を消しているため魔法では捉えきれない。


(ここまでくれば十分だな)


 レオンは立ち止まり踵を返す。

 そして、誰もいない暗闇に語りかけた。正確には、尾行している人間が4人いるのだが、視界には映らず、辺り一面草原しか見当たらない。


態々わざわざ人気のないところまで来てやったんだ。いい加減に姿を見せてくれないか?」


 目を凝らすが何も見えず、耳を澄ませても草木がなびく音しか聞こえない。


「姿を見せる気はないという事か……。馬鹿が!私が本当に姿を確認できないと思っているのか!――全てを映し出せ!スキル〈万物の瞳ユニバースアイ〉」


 レオンの視界が瞬時に変わる。

 暗闇は消えてなくなり、太陽の光に晒されたように、全てが鮮明に映し出された。

 そこでは4人の男が頭からすっぽりとマントを被り、レオンの様子を注意深く覗っている。

 マントが透けて見えることから、何らかの魔法が付与されているのが見て取れた。


「ほう、そのマントに何らかの効果があるらしいな」


 その言葉に男たちは警戒心を強める。

 レオンとフィーアを取り囲むように四方に散り、手にはナイフを持って身構えた。

 明らかに戦闘態勢に入った男たちに、レオンは「やれやれ」と、肩を竦める。


「私は別に戦いを望んでいるわけではない。が――そちらがる気なら仕方ない。少し遊んでやろうか!」

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