街⑨
空はいつしか茜色に染まり、街には長い影が伸びる。
レオンは沈みかける夕日を眺めながら、大通りをゆっくりと歩いていた。
日が暮れてからは商売をしないのだろう。通りに面した店では早くも店仕舞いの準備をしている。
家路を急ぐ住民たちは、足早に路地裏へ消えていき、人影は見る間に
それを見越したかのように空の色も変わり、街は黒一色に染まっていった。
通りに設置された
所々が闇に閉ざされた夜道を、レオンは新鮮な気分で堪能していた。
冷たくなった空気が肌に心地よく、空には漆黒の闇を彩るように、満点の星が輝いている。
都会では見ることのできない光景に、レオンは足を止めて夜空を見上げた。
(星を見なくなったのはいつからだろう……。中学、高校?少なくとも就職をしてからは、空を見上げることなんてなかった気がする)
「暗い夜道も悪くないな」
「ですが、これで街の治安を守れると思っているのでしょうか?」
レオンは路地裏に目を凝らし肩を竦めた。
そこは明かり一つなく、全てが闇に飲み込まれている。
「それは無理だろう。路地裏には明かり一つ無い。衛兵が巡回しているようだが、この街の全てを見て回るには人数が少ない様に見える」
レオンの知る現代においても犯罪は無くならない。
夜道は街灯に照らされ、至るところに監視カメラが備え付けられても尚、当たり前のように犯罪は起こっている。
それを考慮するなら、この街では犯罪が横行していてもおかしくないと思えた。
レオンの言葉を聞いたフィーアは苦言を呈す。
「このような街にいつまでも滞在するのは危険かと。レオン様を狙う人間がいるやもしれません」
「別によいではないか?身包み剥いで抹殺すればよい。蘇生実験の検体として回収するのも悪くない。犯罪を犯すような人間なら、さぞ恨みを買っているだろう。消えてもさほど不思議ではないからな。恐らく大きな騒ぎになることもないだろ」
「ですが、もし万が一にもお怪我をされては一大事です」
「対策はしてある。私が怪我をすることはない」
「それなら良いのですが……」
フィーアとてレオンの強大な力は認識している。
この世界の人間に襲われたところで無傷であろうことも。
それでも、大切な主が襲われているところを、誰が見たいと思うだろうか。
その真意を悟ってもらえず、フィーアは深い溜息を漏らした。
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