街⑦

 冒険者ギルドを後にしたレオンとフィーアは賑やかな繁華街を歩いていた。

 大通りは人で溢れ、道行く人々は店の軒先で足を止めては商品を吟味している。

 所狭しと屋台も並び、香ばしい匂いや、甘い匂いが漂っていた。


「レオン様、これからどちらに?」

「この世界独自のアイテムが気になる。店に並んでいる商品を調べるぞ」


 フィーアは無言で頷くと、レオンの後ろについて歩く。

 二人は店先で足を止め、乱雑に置かれた商品に手を伸ばした。

 どれもが初めて見るアイテムであるが、鑑定をすると、そのレベルの低さにレオンは顔をしかめ、フィーアもゴミを見るように表情が無くなる。

 見るからにろくなアイテムが置かれていないことから、堪らずレオンが心の内で愚痴を零す。


(この世界にはレベルの低いアイテムしかないのか?ガラクタばかりじゃないか……)


 次々と商品を鑑定していくが、アイテムとしてのレベルは10以下――中にはレベル20前後のアイテムもあったが、法外な金額が書かれていた。

 レベル20のアイテムに支払う金額ではない。

 武器や防具はどれも低い数値で特殊効果は何もない。回復アイテムは僅かな効果で即効性に欠けていた。

 こんな物を誰が買うんだと思わず毒を吐きたくなる。

 だが、実際に買う客もちらほら見ているため、これがこの世界の一般的なアイテムなのかと納得する他なかった。

 店の商品をある程度鑑定し終えると、フィーアがどうしたものかとレオンに尋ねる。


「レオン様、次の店に行かれますか?」

「いや、もう必要ない。これ以上は時間の無駄だ」


 周囲の店を見てレオンは言い切る。

 軒先には同じように武器や防具が並んでいたが、ここと似通ったものしか置かれておらず、他の店を覗いても結果は目に見えていた。


「これから如何いたしましょうか?」

「そうだな。そこら辺の屋台で何か買ってみるか、この世界の食べ物はどんな味がするのか興味がある。フィーアも食べてみないか?」

「いえ、私は結構でございます」

「そうか……」


(俺だけ食べるのは少し申し訳ない気もするが――まぁ、好き嫌いもあるだろうし、無理強いはできないか)


 肉を焼く匂いに誘われ、レオンは一つの屋台に目星を付ける。

 そこには、串に刺された肉を一心不乱に焼く店主の姿があった。絶妙なタイミングで肉を返す手捌きは名人芸と言えよう。

 肉は美味しそうな油をしたたらせながら焦げ目を作っていき、炭に落ちた油が煙と共に香り付けをしている。

 その香りに吸い寄せられるように、道行く人が屋台に群がっていた。 

 早速レオンも注文を試みる。


「店主、この肉を一つくれないか?」

「銅貨1枚だよ!」


 威勢の良い声が響き渡る。レオンが銅貨を渡すと、店主は慣れた手つきで素早く肉を差し出した。

 表面がカリカリに焼けた肉は、油が滲み出て見るからに美味しそうである。

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