街④

「えっと、依頼内容はそれでよろしいのですか?」

「先ほども言ったが、私たちは遠い異国から来て間もない。何も分からないため情報が欲しい」

「なるほど……。では期限と報酬の金額はどうされますか?」


(報酬か……。冒険者ギルドに来るまでの間、道すがら買い物客を観察していたが、多くの客が銅貨で支払いをしていた。それを踏まえるなら銅貨はないな。報酬が少なければ依頼を受ける冒険者がいないかもしれない。例えいたとしても時間が掛かる恐れがある。報酬は多くしても時間は短縮したい)


「期限は明日まで。報酬は金貨1枚だ」

「金貨1枚?本当ですか?」


 訝しげに尋ねる受付嬢に、レオンは「そうか、少ないのか」と、頷き返す。


「では金貨2枚にしよう」


 目の前の女性は瞳を大きく見開き声を上げる。


「この依頼、私が受けるわ!エミー、後はよろしくね!わたし休憩時間に入るから!」

「えっ!?ちょっと、ニナずるいわよ!私だってその依頼受けたいのに!」

「何言ってるの?この人の担当を断ったエミーが悪いのよ。こういうのは早い者勝ちよ」


 ニナと呼ばれた受付嬢は同僚の女性を一瞥いちべつすると、満面の笑みでレオンへと向き直った。


「こちらの依頼は、私が責任を持ってお受けいたします」

「まぁ、別に誰でも構わないが――受付が依頼を受けてもよいのか?」

「私たちも冒険者として登録をしております。問題はございません」

「そうか、ならばお願いしよう」

「はい。ここは人目がありますので、お部屋の方にご案内いたします」


 ニナはそそくさとカウンターを出ると、奥の部屋へと二人を案内する。

 レオンにとっても直ぐに情報を貰えるのは渡りに舟、断る理由は何処にもない。

 報酬も所詮は他人から奪ったもの、どれだけ無くなろうと痛くもなかった。

 奥の部屋に入ると、其処にあるのは簡素な机と椅子だけ、調度品の類は何もなく、人が数人入るのがやっとの空間であった。

 少人数用の談話室であろうその場所は、防音になっているのか扉は重い。

 促されるまま椅子に腰を落とすと、机を挟んだ反対側にニナが座り、レオンとフィーアを交互に見て口を開く。


「先ずは自己紹介をしましょう。私はニナ・エムス、よろしくお願いしますね」

「私はレオン・ガーデン。隣に座るのは妻のフィーア・ガーデンだ。よろしく頼む」

「こちらこそ、では何から教えましょうか?」

「先ず、この国や近隣諸国のことを教えて欲しい」


 ニナはレオンの言葉に二つ返事で了承すると、ゆっくりと、そして丁寧に話し始めた。

 これは報酬が高額であることから、彼女なりの配慮である。


「この国はアスタエル王国、この街は東にあるメチルの街です。この国は貴族制で――」





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


明日絶えるアスタエル王国


こんな国には住みたくないですね……

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