旅立ち⑫

「それは制限なく召喚できるという事か?」

「数は召喚できるのですが――少々問題がございます。増やしすぎると制御ができなくなるのです。それともう一つ、レベルの高い魔物ほど制御が難しく、制御できる数が減少いたします」


(それだと召喚最強とまではいかないか。確か玉座の間でヴァルキリーを1000体召喚すると言っていたな。それはレベル40のヴァルキリーは1000体制御できると言うこと。だが、どんなに数がいても、強力な範囲魔法であれば一撃で殺すことも可能だ。レベルが低ければ意味がない。召喚の最高レベルは85、それで何体制御できるかだ……)


「ノエル、最高レベルの召喚では何体制御可能だ?」

「5体まで制御可能でございます」


(戦力としては微妙だな……。敵対するプレイヤーを殺すには厳しいか)


「制御できる数が分かっていると言うことは、今まで召喚を繰り返してきたのだろう?今まで召喚した魔物たちはどうしている?」

「他の従者との戦闘訓練で全て死亡しております」


(あぁ、なるほど。そういう使い方もあるな……)


「うむ。良くわかった。話は逸れたが、サラマンダーでこの周辺を荒らして欲しい。人間も適当に殺して構わん」

「畏まりました」

「ノエルへの要件は以上だ。拠点には一人で戻れるか?」

「私も転移テレポートの魔法が使用できます。問題ございません」

「そうか、誰にも見られず拠点に戻れるな。もう下がってよいぞ」

「はっ!失礼いたします」


 レオンは消え去るノエルを見送りサラマンダーに視線を送る。

 そしてフッと苦笑いを浮かべてサラマンダーに語りかけた。


「精々派手に暴れてくれよ」


 サラマンダーはレオンの言葉に応えるようにひと鳴きすると、巨大な体躯に見合わない素早い動きで、草原の中へと姿を消していった。

 

「さて、要らぬ道草を食ったな。街に急ぐとするか」

「はい」


 フィーアは二つ返事で答えると、レオンに気になることを尋ねた。


「レオン様、よろしかったのですか?」

「ん?何のことだ?」

「人間をあやめてもよいと」

「あぁ、あれか、他にも襲われた人間がいなければ不自然だからな。もしかして嫌だったのか?」

「そのようなことはございません。我々以外の生物などゴミ同然、どうなろうと構いません。むしろ、レオン様からそのお言葉を聞けて、大変嬉しく思っております。私もこれで心置きなく人間を殺すことができますので。あっ!勿論、レオン様に歯向かう愚かな人間をでございます」

「そうか……」


(思い返せば俺も随分と酷いことを言っている。だが自分の身を守るためには仕方のないこと。この世界の住人には悪いが犠牲になってもらう。俺が大切なのは自分自身とかつての仲間、そして俺に従う従者たち。この優先順位だけは絶対に譲れない。そのためにも、先ずは仲間の情報を早く集めなくては……)


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