旅立ち⑩
「フィーア、金目の物を全て回収しろ」
「畏まりました」
「ヒュンフ!」
「はっ!ここに」
レオンの影の中から、跪いたヒュンフが姿を現した。
自分が揉め事を招いたと気に病んでいるのだろうか、何処となく表情に陰りが見える。
「落ち込んでいるようだが気にするな」
「ですが、私の放った矢でレオン様にご迷惑を……」
「些細なことだ。それより周囲に人影はあるか?」
「半径2キロに人影はございません」
「うむ。お前はそのまま警戒に当たれ。他の者が近づいたら直ぐに知らせろ」
「はっ!」
ヒュンフは表情一つ変えることなく、再び影の中に潜るように消えていった。
入れ替わるように、アイテムの回収を終えたフィーアがレオンの傍に歩み寄る。
「レオン様、金目の物は全て回収いたしました」
死体に視線を移すと、身に付けていた剣や鎧は何処にもない。
フィーアが全て自分のインベントリに収納したのだろう。収納するだけならアイテムに触れるだけでよい。後は自分の意思で収納できるため、鎧を脱がす手間もなく時間は掛からない。
それでも時間にすると僅か数分、その手際の良さにレオンも感心するばかりである。
(さて、回収したアイテムは後でゆっくり鑑定するとして、先ずはこれの後始末だな。何が手掛かりになるか分からない。やはり全て燃やしてしまうか)
「フィーアは少し離れていろ。何が証拠になるか分からんからな。全て燃やして灰にする」
「畏まりました」
レオンは離れていくフィーアを横目で確認すると魔法を唱えた。
「
青白い炎が上がり瞬く間に瓦礫の山を飲み込んでいく。
髪や肉の焼ける不快な匂いを周囲に漂わせながら、蒼炎は更に勢いを増して激しく燃え上がる。
レオンは満足気に大きく頷くと、フィーアに視線を向け命令を下した。
「よし、先ずは予定通りか。フィーア、お前は拠点に戻りノエルを連れて来い」
「畏まりました」
フィーアは頷き返すと即座に
消える去るフィーアの姿を見送り振り返ると、燃え盛っていた蒼炎は既に消え失せ、死体や瓦礫は全て灰と化していた。
(燃え尽きるのはほんの一瞬か、ゲームの時には魔法で死体を燃やすなんて、想像すらしていなかったのに……)
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