旅立ち⑦
「私が先ほど言った言葉を覚えていないのか?今回の争いは見なかったことにすると言ったはずだ。当然、罪には問わない。先ずは自分の立場を
「……畏まりました」
顔を伏せ、見るからに落ち込む二人に、レオンは肩を落とす。
(抑、全ての元凶は俺だ。二人に罰を与えるのは間違っている。かと言って、俺が謝る雰囲気でもないんだよな……。取り敢えず街に行くか、立ち止まっていても埒が明かない)
「では、旅を続けるぞ」
「はっ!」
レオンの言葉に二人は頷き、ヒュンフは再び姿を消した。
歩き出すレオンの後方を、フィーアが寄り添うように後を追う。叱られたことが余程堪えているのか、神妙な面持ちで笑顔はない。
その様子にレオンは眉間に皺を寄せる。
(反省しろとは言ったけど空気が重いな。そう言えば、まだ二人の関係について詳細な打ち合わせをしていない。気は重いが話しかけてみるか……)
「フィーア、私たちの関係だが――」
それからは二人の関係について詳細な打ち合わせを行い話を詰めていった。
尤も、レオンが一方的に話をし、それにフィーアが頷くだけである。反論が出る訳もなく僅かな時間で話し合いは終わる。だが、その過程――結婚までの経緯や夫婦生活の話――でフィーアに笑みが戻ったことがレオンにとっては何よりであった。
恐らく自分の将来のことを思い、まだ見ぬ男性に思いを馳せているに違いない。それを思うとレオンは居た堪れなくなる。お芝居とは言え相手が自分で申し訳ないと。
全て話し終えると忘れないように頭の中で反芻する。
フィーアも同じことをしているのだろう。肩越しに後方をちらりと見ると、フィーアが小声で何かを呟きながら歩いている。時折見せる口元の歪みが気にはなるが、敢えて訪ねたりはしない。
それは夫婦と言う設定に未だ納得していない抵抗の現れ、レオンから見れば分かりきったことである。
だからと言って、夫婦以外に良い設定が思い浮かばないのも事実。結局のところ、フィーアには我慢してもらうしかないのだから。
それから二人は黙々と歩いた。辺りには何もない草原が広がり、魔物の一匹すら出てこない。
本来であれば退屈な光景だが今のレオンは違っていた。
半年振りの外は見るもの全てが新鮮、景色を眺めて歩いているだけでも退屈はしない。
時には街道に生えている雑草を抜き、まじまじと眺めては鑑定をしている。
そんな楽しい一時も束の間、レオンは不意にその足を止めた。
遠くに目を凝らし一点を見つめる。
「あれは馬車か?」
「どうやらそのようです」
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