旅立ち④

「どういうつもりなのかしら?レオン様に薄汚い矢が当たったら、あなた責任を取れるの?」

「私がレオン様に当てるわけがないだろ?まぁ最も、お前には当たるかもしれないがな」

「そう、それはレオン様に対する反逆と見ていいのかしら?」

巫山戯ふざけるなよ!私はレオン様に密着するお前を引き離そうとしただけだ!」

「……はぁ、分かったわ」


 途端にフィーアが魔法を唱え始めた。


「[多重障壁マルチプレックスシールド]」

「[魔法障壁マジックシールド]」

「[反射の盾リフレクターシールド]」

「[肉体強化フィジカルブースト]」

「[魔法強化マジックブースト]」

「[肉体再生リジェネーター]」

「[聖域サンクチュアリ]」

「死になさい![聖なる閃光ホーリーレイ]」


 フィーアの手から一筋の光が放たれた。

 光は大きさを増しながらヒュンフの居た場所を正確に貫き彼方に消える。

 しかし、其処には既にヒュンフの姿はない。不意にフィーアの背後から声が聞こえてくる。


「〈次元移動ディメンシュンムーブ〉」

「〈暗殺アサシネーション〉」


 スキルで背後に回り込んだヒュンフの手には、アポイタカラで作られた最高硬度の短刀が握り締められていた。

 瞬時に振り下ろされた短刀によって、フィーアに掛けられた多重障壁が薄氷を割る様に音を立てながら崩れていく。

 その様子にフィーアが思わず舌打ちをした。


「ちっ![完璧な盾パーフェクトシールド]」


 突如現れた強固な盾に、ヒュンフの短刀が甲高い音を響かせ弾かれた。

 ヒュンフは素早く距離をとりながら崩れた体勢を立て直し身構える。そして蔑むように言葉を放った。


完璧な盾パーフェクトシールド再詠唱時間リキャストタイムが長い。暗殺アサシネーションに合わせて使うとは愚かとしか言い様がないな」

「はぁ?怪我人に言われたくないわね。回復手段を持っていないなんて、本当に可哀想」


 フィーアの言葉通り、短刀を握り締めたヒュンフの右手からは、おびただしい量の血が流れ落ちていた。

 反射の盾リフレクターシールドで受けたダメージだが、見た目よりは傷は浅く行動に支障はない。

 そのためヒュンフは鼻で笑う。


「ふん!攻撃手段に乏しいお前が、私を殺せると思っているのか?」

「あら、私が貴方に勝てないとでも?長期戦になったら間違いなく私が勝つわよ」


 言葉を交わしながら、二人は油断なく互いの出方を覗っていた。

 レオンはその様子に、口をポカンと開けながら呆然と立ち尽くす。


(お前たちなにやってんだぁあああ!?全く意味が分からん。俺が玉座の間で言ったことを理解してないのか?そもそも、なんで戦っている?俺が悪いのか?俺のセクハラが元凶なのか?)


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