旅立ち②

「お言葉ですが、レオン様に見窄らしいマントは相応しくないかと」

「そうか?もしかして私と同じマントは嫌だったか?」

「えっ?いや、そういう訳ではございませんが……」


 大好きな主と同じ物を身につけているのに嫌なわけがない。寧ろその逆、嬉しいに決まっている。


「うむ。ならこのマントで問題ないな」

「は、はい……」


 フィーアは反論もできず頷くことしかできなかった。

 よく考えればレオンとお揃い、それほど悪いことではない。寧ろ自慢話ができるというものだ。その様子を思い浮かべ思わず頬が緩んでしまう。

 レオンは嬉しそうなフィーアを肩越しに眺めながら微笑み返した。

 何がそんなに嬉しいのか分からないが、機嫌が良いのは何よりである。これがムスっと不機嫌な人間と一緒であれば、此方まで気が重くなってしまう。

 街までの道程は長い、一緒に行動するなら誰だって笑顔の同行者がいいに決まっている。


(よく分からないがフィーアが楽しそうで何よりだ。後は街についた時にボロが出ないように話しを合わせないとな)


「フィーア、旅の目的を今のうちに決めでおこう。街に入る際に聞かれるかもしれない。辻褄が合うように話を合わせる必要がある」

「全てはレオン様の御心のままに」


 フィーアの言葉を聞いてレオンは眉間に皺を寄せた。


(それは俺一人で決めろってことか……。まぁ、別にいいんだけどさ。俺の考えた設定が上手くいくとは限らないし、ちょっと憂鬱だな……)


 レオンからしてみれば、こう言う決め事は複数の意見を聞いてから決めたかった。みんなで意見を出し合い内容の幅を広げたいと言うのもあるが、一番の目的は責任を分散することにある。

 自分一人に全ての責任を押し付けられるのを嫌ってのことであった。


「それでは、私たちは知り合いを探して旅をしていることにしよう。あながち嘘でもないしな」

「よろしいかと存じます」

「うむ。では、私たちは遠い異国の地から来たことにする。それであれば、この国の文化や習慣が分からずとも怪しまれることもないだろう」

「畏まりました」

「後は私たちの関係だな。遠い異国で一緒に旅をする仲だ。一番怪しまれないのは家族だが、髪の色が違うため兄妹では無理がある。私たちは夫婦ということにしておこう」

「……………」


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