旅立ち①
真っ直ぐに伸びる街道を二人の男女が歩いていた。
一人は何処にでもいるような黒髪の男。紺色のマントを羽織っただけの軽装で武器は何も持っていない。
もう一人は青い髪の見目麗しい女。男同様、紺色のマントを羽織り手には金属の杖を持っていた。
女は男の直ぐ後ろを寄り添うように歩き、傍から見れば仲の良い兄妹や夫婦のようにも見える。
まだ陽は昇ったばかりで気温は低く、朝露で濡れた草木は陽の光を受けて光り輝いていた。
女は白い息を吐きながら男に尋ねる。
「レオン様、
「久し振りの外だからな。歩いて移動する。それよりフィーア、以前装備を渡した時にも言ったが、状態異常を防ぐ
女はそれに大きく頷き深々と頭を下げた。
「はい。十分注意いたします」
街道を歩くのはレオンとフィーアであった。
二人は旅人を装うため、敢えて汚れの目立たない紺色のマントを羽織っていた。
人目を引かぬよう最善の注意を図った結果、二人ともレベルの低い装備品を身に纏っている。
フィーアは自分が握り締める金属の杖を見て顔を顰めた。
そこには普段身につけている豪奢な杖はない。いま手にしているのは所々傷ついた見窄らしい金属の杖、魔法の威力を高める効果もなければ攻撃力も高くない。ただ丈夫だけが取り柄の杖であった。
「はぁ~、このような見窄らしい格好をしなければならないなんて……」
後方から聞こえるフィーアの声にレオンは苦笑いを浮かべる。
「この世界の人間は総じてレベルが低いらしいからな。目立たないためにも装備品のレベルは抑えなければならない。レベル100のアイテムを装備していては、直ぐにプレイヤーだと気付かれてしまう」
「その情報は何処から入手したのでしょうか?」
「ガリレオだ。身に付けている装備品から、この世界の住民はレベルが低いと判断したらしい。いま身につけているマントもガリレオに選んでもらったものだ」
それを聞いたフィーアは小さく舌打ちをする。
レオンに視線を移せば、身に纏うのは見窄らしい紺のマント。フィーア自身がそのマントを身に纏うのに然したる問題はない。
しかし、偉大な主がそれを身に纏うのは、フィーアにとって屈辱以外のなにものでもなかった。
(私は兎も角、レオン様に見窄らしい格好をさせるなんて……。ガリレオは後でお仕置きね)
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