従者⑪
周囲を見渡せば、ツェーンが残念そうに俯いていた。
「ツェーン、貴方は話に加わらないの?レオン様のお世話ができるのよ?」
ヒュンフの言葉にツェーンは深い溜息を漏らす。
(はぁ~、それが出来ればどれだけ嬉しいことか……)
ドワーフのツェーンは可愛らしい少女である。
その名前はドイツ語で10を意味し、レオンの設定で、同じドワーフのズィーベンとは孫と祖父の関係にあった。
シュートヘアのブラウンの髪に、ブラウンの瞳。これは祖父のズィーベンと全く同じである。
製造に長けており、職業は
その体は、がっしりしているズィーベンとは対照的で、体の線は細く今にも折れそうなほど脆く見える。
だが、その小柄な体型とは裏腹に、巨大な鎚を軽々と振り下ろす力強さを兼ね備えていた。
ツェーンがレオンの世話係に手を上げないのには理由があった。それは、既にレオンから別の命を受けていたからである。
ツェーンがレオンから受けた命とは、拠点を作る際に採掘した鉱石から、どれだけ高レベルの武器を造りさせるのかの検証であった。
そのため、ツェーンは他のことに時間を割くことができなかった。レオンの役に立てることは喜ばしいことであるが、やはり傍でお世話をするには遠く及ばない。大好きな主の傍に居られることに比べたら、全てが劣って見えてしまうのは仕方のないことなのかも知れない。
ツェーンは5人のやり取りを嫉妬混じりの視線で眺めることしかできなかった。
「私はレオン様から勅命を受けているから参加できない」
ツェーンの言葉にヒュンフは「なるほど」と頷いた。
暫くすると5人の話し合いにも決着がつく。結局のところ誰も譲らず、世話係はレオンの判断に委ねることになった。
その様子を遠くから眺めていた人物がいる。
蚊帳の外にいるアーサーは、5人のやり取りを見て「いいな……」と、小声で呟いていた。
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