従者⑥

「あぁ、お前たち大丈夫か?」


 従者たちは体を小刻みに震わせ、みな俯いたままであった。

 そんな中で、アインスが僅かに顔を上げてレオンを熱い眼差しで見つめる。その顔は熱に浮かされたように赤くなり、息遣いも荒い。額には玉のような汗も滲んでいた。


「素晴らしいお力でございます!流石は我らが主レオン様!まさかこれほどのお力を持っていようとは!このアインス、改めてレオン様の偉大さに感銘を受けました!」


 アインスが発する強烈な圧にレオンは思わず仰け反った。


「そ、そうか、私の力を知ったのなら護衛が必要ないことも分かるな?」

「はい……。これほどの力をお持ちのレオン様を護衛するなど、身の程をわきまえるべきでした。どうかお許しください」


 深々と頭を下げるアインスに、レオンは口元を引き攣らせる。


「いや、まぁ、分かればよいのだ。私はこれより自室に戻り旅の支度をする。一時間後に呼びに来てくれ」

「畏まりました」


 アインスの言葉と同時に他の従者も更に深々と頭を下げた。

 それはレオンが玉座の間を出ても暫く続けられた。まるで、そこに偉大な主がいるかのように従者たちは動こうとしない。あれ程の力を見せられ、誰もが歓喜に打ち震え余韻に浸っていた。


 レオンは玉座の間を離れ自室に戻る廊下で先程の光景を思い出す。


(アインスたち大丈夫かな?息遣いも荒かったし、皆かなり疲弊しているように見えた。それに床にも汗が滴り落ちていたからなぁ……。あぁ、悪いことしたな、どうしよう……)


 レオンは罪悪感にさいなまれながら自室へと戻っていった。


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