従者①

 三人を見送ったレオンは、気を取り直してアインスに視線を移す。


「アインス、私も外に出て情報を集める。この世界に来ているのは恐らく私だけではない。かつての仲間や、他のプレイヤーの情報を集める必要がある」


 レオンの言葉にアインスが顔を上げて頷いた。


「畏まりました。それでは供回りにナンバーズとアーサー、それに、召喚士サモナーのノエルも同行させましょう。ノエル、今すぐに使い捨ての戦乙女ヴァルキリーを1000体召喚しなさい」


 アインスの言葉を受けて、一人の少女が嬉々として立ち上がる。

 肩口で切り揃えた紫色の髪をなびかせ恭しく頭を下げた。その表情からは喜びが満ち溢れ、透き通るような碧眼を輝かせていた。

 ノエルは嫉妬や羨望の眼差しを受けながら、その手を掲げて召喚の体制に入る。巨大な魔法陣が床に浮かび上がる中、それをレオンの声が静止した。


「まて!1000体もここで召喚するつもりか!」


 レオンの言葉にノエルの動きがピタリと止まる。

 玉座の間は広いため1000体程度であれば十分召喚可能であった。しかし、ここは神聖な玉座の間である。召喚した多くの戦乙女ヴァルキリーでこの場をけがすことは許されない。それに、召喚した戦乙女ヴァルキリーを外に出すことも考えれば、初めから外で召喚した方がいいに決まっていた。

 ノエルが助けを求めるようにアインスに視線を向けると、アインスはいとも簡単にノエルに責任を押し付けた。


「ノエル!召喚と言ったら外でするに決まっているでしょう!仮にもレオン様のおわす玉座の間で召喚をしようなどと、恥を知りなさい!」


 ノエルは泣きそうになりながらも即座に跪き、深々と頭を下げ謝罪の言葉を口にした。


「レオン様お許し下さい」


 その姿にレオンも居た堪れなくなる。


(えぇぇええええええ!アインス、お前ちょっと酷すぎない?今すぐに召喚しろって言ったのお前だろ?って言うか、1000体も召喚できるもんなの?確かに天使系の中でも最下級の戦乙女ヴァルキリーならレベル40しかないけどさ、1000体も召喚を維持するのは無理があるだろ?)


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