隠密②

 三人は返事とともに深々と頭を下げる。

 レオンは三人の様子をつぶさに観察するため、先ずはフレッドに視線を向けた。


 義賊フレッドは金髪碧眼の青年で、隠密行動や盗みに特化した盗賊シーフである。

 邪魔にならないように短めに切られた髪の隙間からは、鋭い眼光が見え隠れしていた。

 他の従者に比べ戦闘能力は一段劣るものの、盗みに関しては従者の中で随一である。

 盗賊のような軽装の上からフード付きの黒い外套がいとうを羽織り、その下には短剣やクロスボウを装備していた。

 洗練された動きで恭しく頭を下げる様子からはレオンへの敬意が感じられる。


 レオンが次に視線を向けたのがノワールである。

 忍び寄る影シャドーストカーノワールは影の悪魔であり、ガチャの設定で魔王配下の十二魔将となっていた。

 十二魔将は言葉通り12人存在する。魔王も同じガチャの従者であるが、魔王と十二魔将にも主従関係があり、ガチャでの設定がそのまま現実の世界に反映されていた。

 ノワールは悪魔と言うだけあり、風貌は異様で黒いフード付きの外套を深く被り、微かに見える顔は黒いもやで覆われ窺い知ることはできない。その黒い靄の中に目と思しき二つの赤い光が浮かんでいるだけであった。

 実体を伴わないことから隠密能力は従者の中でも極めて高く、表情が見えないことから、その思考を読み取ることは極めて困難である。 


 レオンは最後に霞に視線を移した。

 くノ一の霞は見目麗しい女性である。

 艶めく長い黒髪は後ろで一つに束ねられ、吸い込まれるような黒い瞳が印象的であった。

 霞はくノ一という職業を有していることもあり、当然のように隠密能力に長けていた。

 しかし、霞が本来の力を発揮できる場は暗殺である。

 それを考慮するならば、唯の調査に駆り出されるなど霞にとっては不名誉なことなのかも知れない。

 霞は表情を悟られないように黒い外套を目深に被り俯いていた。


 そして、三人とも同じ黒い外套を羽織っているのには理由わけがある。

 黒い外套の名は透明シースルーマント。一日の使用時間に制限はあるが、姿を消すことが出来るマントである。

 三人は隠密能力に優れているが魔法で姿を消すことはできない。そのため、念のためにとレオンが予め持たせていたアイテムであった。


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