覚醒⑥

 レオンはアインスに気圧されながらも、威厳を保つため即座に体裁を取り繕う。

 そして厳かに口を開いた。


「では、名前を呼ばれた者は前に出よ。ツヴァイ」

「はっ!」


 ツヴァイが前に出てレオンの目の前で跪いた。

 レオンはアインスの時と同様に、戦闘教本・極を使い、ツヴァイのレベルを最大まで上げる。

 別にレオンが態々わざわざ教本を使わなくてもよいのだが、どちらが上位者なのかを知らしめるために、レオンは敢えて自分の手で従者のレベルを上げていた。

 部屋にいる全ての従者のレベルを最大まで上げ終えると、レオンはインベントリを開いて従者たちを見渡した。


「さて、レベル上げも終わり後は職業だが、直ぐには決められないだろう。時間をかけて後悔のないように選択しろ。それと、今からお前たちにあるアイテムを渡す。直接インベントリに移すため後で確認をするように。これを使用することで、取得している職業を全てマスタークラスまで転職することができる。取得する職業が全て決まった後に使用するがよい」

「はっ!」


 従者たちの声が幾重にも重なり部屋に木霊する。

 レオンはナンバーズとアーサーのインベントリに訓練教本・極を移し終えると、アインスに視線を向けた。


「アインス、ここにいない従者にはお前からアイテムを渡しておいてくれ。覚醒の秘薬は2本、教本はそれぞれ一冊渡すように。いま私が説明したことも忘れるな」


 レオンはアインスのインベントリに覚醒の秘薬72本、戦闘教本・極36冊、訓練教本・極36冊を移し終えると、それを受け取りアインスも大きく頷いた。


「畏まりました」


(よし、取り敢えずこんなものか。アインスの手から希少なアイテムを受け取れば、ガチャの従者たちもアインスが如何に偉いか身を持って分かるだろうからな)


「では、以上だ。私は暫く一人になりたい」


 その言葉を受け、全員部屋を出て自室へと戻っていった。

 唯一、守護者として命じられたアーサーだけは、レオンの部屋の前で立ち止まり、不審者の侵入を防ぐため不寝番として残っている。


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