覚醒①

 新たな従者が加わり一ヶ月が経つ頃。拠点は順調に拡大しているが、またもや新たな問題が発生していた。

 レオンは自室にアインスを呼び、そのことについて訝しげに尋ねる。

 部屋の奥には玉座のような肘掛付きの椅子が置かれ、その椅子にレオンは腰を落としていた。


「レベルがまだ20にも到達していないだと?」

「はい……、私のスキルで獲得経験値を増やしてはいるのですが……。力及ばず申し訳ございません」


 目の前で深々と頭を下げるアインスを見ながら、レオンは思いを巡らせていた。


(レジェンド・オブ・ダークはレベル100でプレイすることを前提に作られている。1ヶ月も普通にプレイしていれば、自ずとレベルは100になるはずだ。それなのに、新たに加わった従者たちのレベルが上がらないのはどういう事だ?しかも、戦闘職の従者は鍛錬場で24時間訓練してるんだろ?アインスがスキルまで使っているのに、1ヶ月でレベルが20にも満たないとは……。考えられるとすれば、この世界では獲得経験値が激減するということか。全く本当に厄介だな……)


「レベルが上がりやすい序盤でこれだからな。レベルを100まで上げようとすれば、何十年かかるか分かったものではないな」

「はい、それと職業なのですが、新たに取得した職業は全員未だ初級クラス、中級クラスに転職した者は誰一人おりません」

「経験値はおろか、熟練度まで激減しているということか」


 レオンは軽く溜息を吐き出してメニュー画面を開いた。

 課金ショップを選択して、戦闘教本と訓練教本に視線を移す。


(まさかこれを買う日が来ようとは。昔はこんなもの誰が買うんだと馬鹿にしていたのに……)


 レジェンド・オブ・ダークにも課金でレベルを上げる手段はある。

 しかし、元々レベルが上がりやすいため、プレイヤーからは見向きもされないアイテムであった。


【戦闘教本・極……レベルを最大値まで上げる】

【訓練教本・極……取得している職業全てをマスタークラスに転職させる】


(購入するとしたら戦闘教本・極と訓練教本・極の二つだろうけど、これ10000ポイントもするんだよな。かと言って、中途半端なアイテムを購入してもレベルは最大まで上がらないし、職業もマスタークラスには届かない。仕方ないか……)


 レオンは自ら創り出した従者10人と課金従者37人、合わせて47人分の教本を購入して課金ポイントに視線を移した。


(残りの課金ポイントは8662000ポイントか、大分使ったがまだまだ余裕はある)


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