プロローグ⑧


 ゲームでは複数の職業を取ることができる。

 最初に選べる一つと、レベルが10上がるごとに一つ、レベル100では最大11の職業を取得できた。そして、職業には熟練度があり、一定の熟練度に達すると、更に上の職業に転職する仕組みだ。

 職業は初級クラスから中級、上級、最上級、マスタークラスまでの5段階。

 それは、上位職に転職する度に枝分かれしている。

 初級職の傭兵であれば、最終的にはナイトマスター、パラディン、アークナイト、ソードマスター、インペリアルナイトなど、16の戦士系のマスタークラスに分かれている。そして、マスタークラスになると、職業により、僅かにステータスにボーナスポイントが入る仕組みだ。


 レオンはといえば、戦士系、魔法系、神官系など、バランスよく職業を選んだのだが、これが大きな失敗であった。

 最終的にレオンのステータスは飛び抜けたものが何もなく、平均的なものになってしまった。

 バランスが取れていいようにも見えるがそうではない。

 レジェンド・オブ・ダークにおいて、取得する職業は極振りでなければ対人戦では通用しないからだ。


 例えば、ギルマスであるコタツは11の職業全てを攻撃魔法職で取っている。

 これにより、魔法攻撃力にボーナスポイントが上乗せされ、最大級の火力が出せるようになっていた。

 更に魔法やスキルには再詠唱時間リキャストタイムがあるため、同じ魔法を連続で放つことはできない。

 しかし、コタツのように11の職業を全て攻撃魔法職で取得していると、強力な攻撃魔法を複数覚えることができる。これにより、強力な魔法での波状攻撃が可能となり、相手を倒しやすくなるのだ。


 レオンはと言えば、攻撃魔法も攻撃スキルも続かない上に、ステータスは平均的で威力も劣る。そのため、対人戦でのレオンの強さは、装備の性能を考慮しても中の上が関の山だ。

 勿論、共済措置としての課金アイテムは存在する。

 課金アイテムの中には、レベルを10下げて職業を取り直せるアイテムが存在した。当然レオンも知っているが、それでも職業を取り直さないのは、ポイントを使うことを躊躇したというよりも、高難度のレイド戦を考慮した結果だ。

 レオンのレイド戦での役目は、仲間が削り切ったレイドに止めを刺すことだけではない。前衛と後衛の間に入り、前線を維持する事がレオン本来の仕事である。

 メイン盾のヘイトが切れた時には、代わりに攻撃を受け止め、回復が間に合わない時には回復に回る。それらを考慮すれば、レオンが取得している職業は、レイド戦に置いて決して悪いものではなかった。

 誰にでも出来きる役割のため、レオン自身は自分のことを、一般的な中堅プレイヤーとしか思っていない。

 しかし、そうではなかった。

 寧ろ、前線が崩れないように、レオンが絶妙に調整をしているからこそ、他の仲間が攻撃、盾、回復と、自分の役割に全力を尽くせるのだ。

 当の本人は何も知らず、戦いの庭園バトルガーデンの仲間たちだけが、そのことを理解していた。



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