プロローグ⑦


「そう言えば今日はレイドを狩りにいかないんですか?落ちてる人が多いみたいですけど」

「GRの武具は全員に行き渡りましたから、今日は明日に備えて休みにしたんですよ」

「そうだったんですか。明日は恐らく新しいレイドも実装されるでしょうから忙しくなりますね」

「レオンさんには頑張ってもらいますよ。私の読みでは新しいGRゴッドレアアイテムが実装されると思うんですよね」

「確か明日のアップデートは21時に完了ですよね。明日は仕事を早く切り上げて直ぐに入らないと」

「期待していますよ。レアドロップはレオンさんの手に掛かっていますからね。それでは私も徐々そろそろ落ちますので。おやすみなさいレオンさん」

「おやすみなさいコタツさん」


 そう告げるとコタツはレオンの前から姿を消した。

 残されたレオンは左手を掲げる。その5本の指全てにフォルトゥーナの指輪リング・オブ・フォルトゥーナが嵌められていた。

 戦いの庭園バトルガーデンにおいてレオンの役目はレイドに止めを刺すことである。なぜなら、フォルトゥーナの指輪リング・オブ・フォルトゥーナを装備したプレイヤーが最後に止めを刺さなければ、ドロップ率に影響を及ぼさないからだ。

 レオンがフォルトゥーナの指輪リング・オブ・フォルトゥーナを託されているのは、毎日ログインをしていることもそうだが、最も大きな要因は、レオンが運の上がる職業を取得していたからだ。

 レオンの取得した職業のうち、2つは戦闘に関係がないものだ。

 マスタークラスの職業である勝負師と天命師、この2つが僅かに運のステータスを上昇させていた。


 レオンがなぜ戦闘に関係のない二つの職業を取得しているのか。

 理由は至極簡単である。

 ゲームを始めて間もない頃、レオンは運の良さが、アイテムのドロップ率に影響を及ぼすと考えていたからだ。

 後から過ちだと気が付いたときは落胆したものだが、いまでは、その運の高さでギルドに貢献できることが、レオンは心の底から嬉しかった。

 フォルトゥーナの指輪5個と合わせると、レオンの運は最大値の100まで上がる。戦いの庭園バトルガーデンの中において、運が最大値まで上がるのはレオンだけのため、自ずとレオンにドロップUPの役割が回ってきたのだ。

 しかし、レオンは戦闘に関係のない職業を取得していることもあり弱かった。


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