レジェンド・オブ・ダーク

プロローグ⑥

　レオンは初めてＧＲ（ゴッドレア）装備が実装された日のことを思い返す。

　ＧＲ装備は同時に武器、防具、装飾品の三つが実装された。武器や防具の性能が告知され話題になる中、装飾品だけは違っていた。

【僅かに運が上がる】

　それだけの表記しかされていなかったのである。

　それまで、レジェンド・オブ・ダークには運を上げるアイテムはなく、また運の要素もそれほど重要視されてはいなかった。

　それは多くのユーザーが検証した結果、アイテムのドロップ率は、ステータスの運では変わらないと分かったためである。

　運はあくまで確率に左右されるスキルや魔法のためにあると思われていた。

　そのため、運の上がるＧＲアイテム、フォルトゥーナの指輪（リング・オブ・フォルトゥーナ）は他の上位のギルドから見向きもされなかった。

　戦いの庭園（バトルガーデン）でも当然のように、武器や防具の素材を集めるべきだと声が上がる。

　しかし、そんな中でコタツがフォルトゥーナの指輪（リング・オブ・フォルトゥーナ）には何かあるのではと疑問を呈した。運が上がるだけの指輪がＧＲなのはおかしいと。

　コタツはギルドマスターであり仲間からの信頼も厚い、それなら一つ作って効果を確認しようという話になったのだ。

　戦いの庭園（バトルガーデン）の仲間たちは時間をかけて素材を集め、凡そ半月の期間を掛けて指輪を完成させた。そして、数日を掛けて何度も検証を行った結果、あることが判明した。

　それは、フォルトゥーナの指輪（リング・オブ・フォルトゥーナ）はアイテムのドロップ率を変えるというものだ。

　正確には、今までは運の要素がドロップ率に影響を与えていなかったものが、指輪を装備することで、運がドロップ率に影響を与えるというものだ。

　早い話が、今までは運が０でも１００でもドロップ率が同じであったのに対し、指輪を嵌めることで、その運がそのままアイテムのドロップ率に影響を及ぼすようになったのだ。運が１００ならアイテムのドロップ率は１００％、間違いなくぶっ壊れアイテムだ。恐らくは運営の設定ミスもあるのだろう。

　この効果が解明されると、戦いの庭園（バトルガーデン）は情報を公開しないように徹底し、指輪の独占に走った。当然だが運営にも報告はしない。

　フォルトゥーナの指輪（リング・オブ・フォルトゥーナ）を製造するには、レイドで手に入るレア素材の他にも、育成で手に入るレア素材など、複数のレア素材を大量に必要としていた。

　中には数が限られる物も多く存在し、購入できないものは、他のレア素材と交換で根こそぎ手に入れた。

　他の上位ギルドが武器と防具の素材集めに没頭している中、戦いの庭園（バトルガーデン）は瞬く間に

フォルトゥーナの指輪（リング・オブ・フォルトゥーナ）の材料を市場から消していった。そうして作られた指輪の数は全部で５つ。恐らく現時点で作れる最高の数。その頃には指輪の効果は重複することも分かり、戦いの庭園（バトルガーデン）は素材集めで圧倒的優位に立っていた。

　後は言わずもがな、ＧＲ（ゴッドレア）の武器と防具の素材集めに取り掛かる。ほぼ落ちることがないレア素材が確実に、しかも指輪を複数嵌めることで、時には２個、３個と落ちた。

　幸いにも武器と防具の材料は、何度でも挑める最難関レイドからのレアドロップのみ。僅か数日で、ＧＲ（ゴッドレア）の武器が簡単に作れていた。

　毎週のようにＧＲの武器や防具を作り続ける日々、笑いが止まらないとは、まさにこのことである。