プロローグ⑤


 レオンは天空城にある自室を出ると、玉座の間に歩みを進めていた。

 天空城は何処も荘厳であるが、玉座へと続く控えの間からは、より厳かな雰囲気に包まれていた。

 廊下の両脇には白銀の甲冑が列をなし、天井には煌びやかなシャンデリアが幾つも吊るされ、床には足を踏み入れるのを躊躇わせる美しい絨毯が敷かれている。


 玉座の間に向かうレオンの前方で、目の前の巨大な扉が音もなく開かれた。 

 扉の隙間からは、豪奢な衣装を身に纏う、一人の老人が顔を覗かせた。長い髭を蓄えた老人は、レオンを見つけると嬉しそうに歩み寄ってきた。


「レオンさん、こんばんは」

「コタツさん、こんばんは。明日はついに記念すべき4周年目突入の大型アップデートですね」

「そうなんですよ。もう待ちきれないです」

「明日もガチャを回すんですか?」

「当然じゃないですか。私はガチャを回すために仕事をしてるようなものですから。尤も、回すのは人形ドールガチャだけだと思いますよ」

「新しく実装されたガチャの従者を引き連れていると、目を引きますからね」

「私もギルマスとして、戦いの庭園バトルガーデンの宣伝を兼ねて目立っておかないと」

「相変わらずですね。装備ガチャは半年前に製造可能になったGRゴッドレアに劣りますし、ガチャを回す人が減って運営は困らないんでしょうか?」

「我々は兎も角、初心者は相変わらず回してるみたいですよ」

LRレジェンドレアでも作るとなるとそれだけ困難ってことですか、俺たちが簡単に作っていることが異常なんでしょうね」

「LR以上の装備は誰でも作れるわけではないですから。特にGRの素材は、私たちでも苦戦するレイドでしか手に入らない上に、ドロップ率が異常に低く設定されていますからね」

「あれって、絶対に作らせる気ないですよ」

「全くです。私たちもフォルトゥーナの指輪リング・オブ・フォルトゥーナが作れなかったら危ないところでした」

「あれは見事に他のギルドを出し抜きましたから。コタツさんの先見の明があってこそです」

「たまたま上手くいっただけですよ」




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