プロローグ④


 そして、ガチャを回すタイミングを掴めぬまま3年の月日が流れた。

 これはもはや堅実というよりも優柔不断と言っていいのかもしれない。

 今まで課金ポイントを使用したのはショップで売っているものばかり、ガチャのような不確定要素がないものに限定されていた。

 購入したのは二種類のみ、インベントリを最大まで広げるのに100000ポイント、愚者の指輪リング・オブ・フールの購入に1000ポイント使ったが、ポイントはまだ9899000ポイント残っている。


【インベントリ拡張……アイテムの所持数を増やす。複数購入可】

愚者の指輪リング・オブ・フール……飲食、排泄、睡眠不要】


 お陰でインベントリは9999種類9999個までアイテムが持てるようになっていた。それだけレジェンド・オブ・ダークには多種多様なアイテムがある。


 そして、愚者の指輪。

 これは戦闘系ギルドに所属するレオンには欠かせないものだ。

 レジェンド・オブ・ダークには飲食などの概念がある。

 空腹になれば体力が徐々に減り、排泄を行わなければ体調が悪くなり病気になる。一定時間行動すると睡眠を取らなければならない。

 まさに、普通に生活をしているのと何ら変わらない。これも擬似生活を体現するレジェンド・オブ・ダークの売りの一つだ。


 しかし、戦闘系ギルドに所属するプレイヤーから不満が爆発する。

 純粋に戦闘を楽しみたいプレイヤーから見れば、そのような食事や排泄などは邪魔でしかない。

 特に厄介なのが睡眠であった。3時間連続でログインすると、睡眠と称して強制的にログアウトするのだ。

 運営側からすれば、プレイヤーが体調を崩さないための配慮であるが、レイド戦など大事な場面でも強制的にログアウトさせられるため、プレイヤーからは不満が殺到した。そんなプレイヤーの声に後押しされて造られたのが、愚者の指輪リング・オブ・フールだ。

 開発者の皮肉も込められていたのだろう。指輪の名前には、生命に必要な欲求を取り除いた愚か者、そんな意味が込められているらしい。


 初めはソロで活動していたレオンであったが、レイドの難易度に悩まされ、結局は戦闘系のギルドに入っていた。

 ギルドの名は戦いの庭園バトルガーデン

 所属した当初は違う名で、戦いの庭園バトルガーデンとは後から改名された名だ。

 レオンはレイド討伐に積極的なこともあり、ギルドはレオンのことを快く受け入れてくれた。

 戦闘系のギルドに所属するプレイヤーは、得てしてログイン時間が長い傾向にある。レオンもそれに違わず、時間さえあれば仲間たちと素材集めに没頭していた。

 休日ともなれば、一日中レイドの梯子はしごは当たり前である。

 レオンは仲間たちと協力し、素材を集めては製造限定のLRレジェンドレアアイテムを幾つも作りだしていた。

 仲間が増える度に拠点も徐々に大きくなり、いつしか戦いの庭園バトルガーデンは、多くのギルドが狙っていた天空城に拠点を構えるまでになっていた。

 廃課金者が多く在籍していたことも起因するが、それだけが理由ではない。課金だけでは限界がある。其々がレジェンド・オブ・ダークに多くの時間を割いていたからこそ、天空城を手に入れるまでに至っていたのだ。

 有名な拠点の一つを手に入れたことで、戦いの庭園バトルガーデンは上位ギルドの中でも一目置かれることになる。同時に多くの敵を作ったのも、また確かだ。




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