3−17/魔王様、プレゼントの当選者にはDMをお送りいたします(終)



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【@666vin ゴチでした。プレゼント応募しました  一般熾天使@天界より愛をこめて】

【@666vin ゴチでした。プレゼント応募しました  ひとつぶで風速300Mワイバーン】

【@666vin ゴチでした。プレゼント応募しました  愛狩人ポンおじ】

【@666vin ゴチでした。プレゼント応募しました  出させてよエルフの森】

【@666vin ゴチでした。プレゼント応募しました  イノシシに生まれた男】

【@666vin ゴチでした。プレゼント応募しました  よろしくセミ亜人】

【@666vin ゴチでした。プレゼント応募しました  どこかの城壁警備兵】

【@666vin ゴチでした。プレゼント応募しました  僧侶マジマ】 

【@666vin ゴチでした。プレゼント応募しました  あそぶのをやめたあそびにん@進捗ダメです】

【@666vin ゴチでした。プレゼント応募しました  パンデモニアンデスワーム】

【@666vin 着飾ったの普通に可愛くて逆に腹立った 魔王だけど天使ってどっちかにしろよヴィンデモングランジェル  勇者アレン@ヴィンちゃんフィギュア公式通販希望】



「ほっっっっらあぁああぁああズモカッタこれおまっ余計なこと言うからこれぇええええええぇ!!!!」


 実況おまけ動画投稿の翌日、幻夢魔城ガランアギト・朝の玉座の間。

 リプ数がとんでもないことになっている自分のアカウントを確認したヴィングラウドはひたすらに慌てふためき、一方ズモカッタは「よし」と頷く。


「動画投稿の効果、早速あったようですね。人類め、まんまと誘導されたことも知らずに暢気なものだ。見事、ヴィングラウド陛下——魔王としての威厳を保ったまま、人類を支配するという態度を見せつけながらもこれほど鮮やかに人心を掌握して見せるとは、このズモカッタ、その王威をただ畏れるのみです」

「えっ」


「此度の作戦、大成功と言えるでしょう。すべては陛下の、そのカリスマ性あってこそです」

「——は、ははははははは! うむ、で、あるか! で、あるな、ズモカッタ! 成程、これもまた、罰ゲーム動画まで含めて作戦の内なれば、つまり、このプレゼント企画など、奴らを釣る為だけの虚言、百妖元帥の名に相応しき、甘い幻惑であったというわけか!」


「は? いえ、そこはきちんとプレゼントしないと。架空の当選者捏造なんて、魔族でもしませんよそんな恐ろしいこと。皆待ってるんですから。ここで信頼を裏切ったら、それこそ二度と人間界いちの愛され魔王になれませんよ?」

「余たまに汝のスタンスわかんなくなるんだけど!?」


「ほら、こんなに純粋に期待してるファンもおられるのですから」——スマフォを操作し、玉座の間大スクリーン映し出される、視聴者の、ギルメンの声。

 そこには、こうある。


 

【@666vin やっほー、ボクだよボク! 罰ゲーム動画見たぜ! ああいう普通のカッコするとおかあさんに似てきたねヴィンちゃん、なんかちょっと涙出ちゃった! 洞窟に飾って崇拝したいから、あのフィギュア一体くーださいっ!  マジワルパパ】



 ホームに飛んで、アイコンを確認した。bio欄プロフィールも読んだ。

 間違いなく、本人くさかった。


 ヴィングラウドは静かに事実を噛み締め、目を閉じ、腕組み、うんうん頷き、


「こいつのアカウント一刻も早く爆発しねえかなあ」


 一瞬魔王を忘れるくらい、切実でマジな願いが口をついて出た。


 がんばれ、まけるな、666代魔王ヴィングラウド!

 頭痛やくそうを常備しろ、665代目の歴代最ヘタレ魔王を父に持つ娘!


 いつの日か、ネット上ではそれなりにキャラクター作ってリアルと切り離してるのに、一切構わずSNSと現実で同じ絡みかたをしてくる身内を粉砕できるそのときまで!



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【魔王様の動画をおまけも見てください!】

【チャンネル登録者数増加中】


【三章 → 終】


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