1−03/魔王様、アカウント知名度でポポーラ氏に負ける
★☆★☆★☆★☆
「んクソリプッッッッッッッッ!!!!」
玉座の間の端から端まで響き渡る主の反射的リアクション。
……が、収まったあたりで、ぽつりと呟く。
「どうしてこうなる」
既に限界まで絞った雑巾を、更に更に絞りに絞って垂れ落ちた一滴のような重みがそこにあった。
さもありなん。
今日でアカウントの開設からちょうど一ヶ月、当初の予定では今頃百万の
――はずだった。
それがなんだ。
これはどうだ。
「百妖元帥よ」
「はっ」
「余のアカウント、ソッコ草原にあるポポレ村の村長よりギルメン少ないんじゃけど」
「恐れながら陛下、それは仕方なきことかと。ポポレ村村長、ポポーリノ・ポポーラ氏(74歳)はマジッターサービス開始当初からの最古参マジッタラーであり、その発言いちいち面白く、テキストはセンスに溢れ、昔からの趣味であった風景写真は投稿の頻度も高く見るものを飽きさせない工夫を毎回凝らし、その上、抜群にミノタウロスのモノマネがうまい。こんなもの人気が出ないわけはありませんし、かく言う私は相互ギルメンですし、そもそもマジッターでギルメンを増やすということを甘く見ないでいただきたい」
「あ、はい、ごめんなさい」
「ポポーラ氏にも謝って」
「ポポーラ氏ごめんなさい、さっそくギルメンにしていただきます」
そのようにして今、666代魔王ヴィングラウドがソッコ草原ポポレ村村長のギルドに入る。ふと気になって覗いたアカウントはヘッダー画像からして傑作で(麦の収穫をするミノタウロス仮装の村長)、しばし発言を遡る魔王は一分に三度のペースで噴き出して、
「違くて」
脱線にようやく気付いて顔を上げた。
「なんで余のアカウント、こんなに注目度低いの。魔王だよ? 魔王がマジッターやってて、わざわざ征服計画発信してんのに、誰も見ないでどうすんの? 余がこんなこと言っちゃうのも何だと思うんだけど、人類、危機意識低くない? これじゃヤバくない?」
なお、実際にヤバいのは言うまでもなく魔王側である。
この計画のキモは【侵略予告で人類が恐れ慄き→それにより魔力が補充され→得た力を元に計画を実行に移すことで→絶望が連鎖し更に魔力が精製される】という流れにある。
つまり、逆に言ってしまえば、その初手であるところの【侵略予告】で誰も絶望しなければ→魔力が補充できず→計画は実行に移せず→魔族がナメられる、という悪循環、負のスパイラルに飲み込まれてしまうということなのだ。
言うだけ&口だけの、実際には一度だって何もしていない魔王のアカウントなど笑いの種、今となっては発言を繰り返すたびに信憑性は薄れる一方、魔力はハーピーの涙ほどもたまらない。
これには参った。
何しろまったく予期していなかった。
ちょっと考えればすぐに気付く、あたりまえに明白で致命的だった計画の陥穽であるが、しかし、だからと言って、誰が思う。
まさか。
まさか人類が、魔王の征服予告を、まったく恐れもしないなど。
それどころか。
さすがにこれは、予期するとか以外とか、それ以前の問題で――
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