第3話売るし、買う

68歳にしてフリマアプリにハマってしまった。


皆さんはフリマアプリと言うものをご存知だろうか。


フリマアプリとは、フリーマーケットのような個人間での取引をネット上で実現するアプリの事であり…

いや、いかんいかん歳を取ると説明がちになってしまう。


とにかく色んな物が売られているのだ。


定年を迎え暇を持て余し、趣味を探しておった私は娘に教えて貰ったフリマアプリへとたどり着いた。


そこで私はまず盆栽のセットを買ってみた。

年寄りと言えば盆栽だろうという定番を狙ってみたのだが、いまいち良さが分からなかった。木って(笑)


盆栽をやりながら、もう少し変化が顕著に見られる物がいいなと思い、私は次に油絵のセットを買った。

元々絵が苦手な私だったが、一生懸命1つの絵を描き上げた。

だが妻に眠付きが悪くなると不評だった為やめた。


フリマアプリの良いところは、買うだけでなく要らなくなった物を自分も売れるところだ。

売るし、買う。

それが手元1つで出来るとはアトムが空を飛び回るのも遠い話ではないかもしれない。


話は戻って、次に私はバイオリンの初心者セットを買った。たまたま葉加瀬なんちゃら太郎がテレビで弾いているのを見て触発されたのだ。


それはもう酷いものだった。

近所の犬という犬が吠え、カラスが鳴き、一足早く地獄に落ちたのかと間違えるとこであった。


だがこれしきの挫折で心が折れるほど柔な私ではない。


それから暫くして私は工芸セットを買った。

そしてとりあえず器を作る事にした。

自分の作った器で飲む味噌汁はさぞかし美味かろう。


味噌汁の具はもちろん豆腐と油揚げだ。

この組み合わせに勝る味噌汁を私はまだ知らない。


やって見ると存外楽しいものだった。

盆栽と違って自分がやったことが目に見えて結果として現れる、素晴らしい。

これは思ったより早く完成しそうだ。


よしよし、形作りは終わった。

初めてにしては上手いものではないだろうか。


さて、では仕上げに漆を塗ろうか。

漆、漆…漆がない、セットに入ってなかったのか。

仕方ない、フリマアプリで


漆、買う。

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