TS幼女になったけど、男らしくチヤホヤされたい!

totto

第1話

「キャーーーーなにこの子可愛い過ぎぃ!」


「ほっぺもプニプニでスライムみたい!」


「お菓子があるよぉ、美味しいよぉ、あーーーんして」


「白髪に青い瞳でお人形さんみたい。私もこんな妹が欲しいぃぃぃ!」



 なんでこうなった。

 


『良かったじゃないですか。女の人からチヤホヤされていますよ?』



 俺をこんな状況にした張本人がソプラノボイスで直接脳内に語りかけてくる。

 目の前特等席でニヤニヤとイヤラシイ笑みを浮かべて眺めている猫モドキが全ての元凶諸悪の根源だ。






 事の始まりは今より数時間前。

 不幸な死に方をした俺は、いつの間にか白い不思議な空間に居た。そこで女神と名乗る超絶美女から、



『1つのお願いを叶える代わりに、私の世界に転生して加護の力で魔王をしてくれませんか?』



 とお願いされ俺は大喜びで了承し「女性にチヤホヤされたい!」と願った。

 そんな俺に、女神がニヤリと口元を歪めて居た事にも気がつかずに。






 そして現在。

 街の近くに、猫にふんした女神と共に転生を果たし、女神と一悶着ありながらも優しい門番のお姉さんに案内されて女性のみで構成されたギルドに来ていた。


 確かに、俺の願いは叶った……叶ったが、こんな風にチヤホヤされたかった訳じゃない! 美しい女性の方々に群がられて、触ってもらって嬉しいけど、


なんで……なんで……なんで幼女なんだぁぁぁあああ!!



『それ、転生した最初の時も言ってましたよね』



 誰のせいだと思っているんだ!



『カワイイは正義ですし!』



「ちーーーがーーーーうーーーーのーーーーーーーっ!」

(違うんだーーーーーっ! こういう事じゃないんだぁーーーーー!)



 男らしい言葉で叫ぼうとすれば、荒い言葉使いは幼女らしいモノに変わり、独特の甲高く可愛らしい声が響き渡る。



『幼女に男言葉は不要なのです。心優しい私は、その辺もしっかりと加護でカバーしておきましたよ!』



 心遣いする所がオカシイだろ!?

 しかも、俺の心の声を常に聞いているとか聞いてねぇよ!



『加護の力だから聞こえてしまうのは仕方がないんです。えぇ加護のですから』



 それに女の人からチヤホヤされたいと願ったけれども、こうじゃないんだっ!

 もっと男らしい姿でキャーキャー言われたいのに、これだと幼女が甘やかされているだけじゃないかっ!



『だが、そこがいい!』



 オーウ、ジーザスチクショー……! 神は死んだっ!



『私は生きていますよ?』



 テメェは神界に帰りやがれ!!!



『嫌です。ここが私の居場所パラダイスです!』



 などと脳内で猫モドキ女神とやり合っていると、頭上から怒鳴り声が聞こえてきた。



「ほら、アンタ達が弄りすぎるからオミちゃんがご立腹だよ。さっさと自分達の持ち場に戻りな! 最近まで接触のなかった魔族の動きが活発になって、朝は特に忙しいんだ」



 俺を取り囲んでいたギルド職員のお姉さん方が、目の前の人に文句を言いながら渋々戻っていった。

 その仁王立ちで叱りつけた姿を、俺は見上げる。

 少し切れ長で赤い瞳は強い意思を、赤髪は情熱の炎を思わせる。まさに上に立つ人間を体で表しているような存在。そう彼女がここの頂点に君臨するギルドマスターである。




「ありがとうございましゅ」



 流石に揉みくちゃにされ囲まれ過ぎて身動きが取れなかったので、彼女が叱ってくれて助かった。

 頭を下げてお礼を言うが、最後に噛んでしまった。

 それは幼女故なのか。

 それとも床で『最後に噛んじゃうオミたん萌えぇぇぇぇぇ!』と悶えている猫モドキに扮している駄女神コイツの所為なのか。

 いや、きっとコイツの所為に違いない。



『犯人はこの中に居る!』



 オメーだよっ!



「ちゃんとお礼が言えるなんてお利口さんだねぇ。一応、彼女達に悪気があった訳じゃないから許してやっておくれ」



 そう言いながら俺の手を引っ張り、別室へ連れて行くギルドマスター。

 これから、身寄りの無い俺はギルドマスターから1対1で話を聞かれることになっている。

 とりあえず俺は、手を引かれながら現状を再確認する。




 この街からほど近い位置に魔王を頂点とする魔族の街がある。自分達とは違う種族で良く分からない相手という認識のまま、お互いに全く干渉し合わないで平和な日々を送っていた。

 しかし、最近になって魔族がこの街に興味を持ったのか、魔族の斥候などが近隣に姿を見せたりと動きを見せ始めたのだ。

 そのせいで街は、魔族と戦争が起こるのではと緊張した日々が続いている。


 、それを危険だと判断した女神により、魔王をこの世界に送られたのが俺だ。

 ラノベや漫画、Web小説で学んでいる俺の推察に間違いはないだろう!




 思考の海から戻ってきた俺は、フッと今の自分の姿を見下ろす。

 今の姿が男の姿だったら、美女と手を繋いでいる絵面もまた違ったかもしれないのに……そう思わずにはいられない。

 小学校に上がるか上がらないかぐらいの幼女が、お母さんに手を引かれている姿だよな。



『手を引かれてトテトテと歩く幼女の後ろ姿は最高!』



 もうダメだ。誰かこのロリコン女神をどうにかしてくれ。



『もう、オミちゃんはツレナイですね。ちゃんと望み通りにしてあげたじゃないですか』



 そもそも幼女こんな姿で魔王をどうにかしろって無茶だろ!?



『大丈夫です。その為にと加護をつけたのですから。大船に乗ったつもりで居てください!』



 物凄く不安だが、それが泥船でないことを祈るばかりだ……。

 それにしても、なんでこうなったのか……お願いを1つ叶えてもらう時にしっかりとお願いしていればっ!



『全くですね』



 お前のせいだろぉ!?



『どうやって女性からチヤホヤされたい、とは聞いていませんので』



 なんて白々しい。そもそも幼女の姿なのは、どう考えてもお前の趣味だよな……。



『ジト目で睨みつけるオミたん幼女可愛いよハァハァ』



 もうヤダ、この女神ロリコン…………ガクッ。

 突如、廊下で膝と手を床に付いてこうべを垂れる俺をギルドマスターが心配してくれるようだが、今は立ち直れそうにないから暫く待ってくれ。



『そんな姿も堪りませんねぇ!』



 ハァ……。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




 転生する時は、女神の加護チート能力で魔王を活躍して女性からチヤホヤされる、そのはずだった。

 はずだったのに……。



「かーーーわーーーいーーーいーーーー♪ やっぱり白髪とフリルの白いワンピも似合うわぁ」


「ねぇねぇ、次はこっちを着てみましょう!」


「それも絶対に似合う似合う! あ~~~もうお持ち帰りしたい!」



 何故か幼女用のお洋服を取っ替え引っ替え着せられていた。




 ギルドマスターと話をしてから、未成年12歳以下は冒険者登録に保護者の同意が必要なのだが、どう見ても12歳以下幼女な俺は事情を話して嘘八百で登録し終えた。

 その後、一文無しの俺の為に装備を買ってくれるというお姉さま方に付いて来たら、そこはなんとも可愛らしいお洋服が並ぶ女性服専門店。


 おい、装備はどうした、装備は!?


 そんな心の声も虚しく、着せ替え人形となる俺。綺麗なお姉さん達に囲まれて嬉しいはずなのにドッと疲れてくるぜ、あはははは……。

 冒険用の装備イコール外出用のお洋服なんですね分かります。



『ふりふりワンピのオミたそ、くぁわゆす!』



 黙れ駄猫!

 床でゴロゴロと転げている駄猫をキツく睨みつけても更に喜ぶだけなので、ほっておこう。



『あん、オミたんがツレナイです』



 無視だ無視。

 器用にシナを作り泣き真似をしているが、気にしない。



「はぅ……」



 それにしても長時間の着せ替えごっこで、疲れと落胆でため息が漏れてしまった。

 体感時間で1時間程経ったと思う。

 転生してきて1日目だが、濃い時間を過ごしている所為でヘロヘロだ。木造の窓の外を見上げればちょうど太陽も真上に来る頃合で、お腹も空いてきた。

 俺の男の夢ロマン溢れる武器や防具は一体いつになったら……。



「オミちゃんどうしたの? ってもうこんな時間だ。お腹すいたよね、ご飯にしよっか」



 と、俺の様子に気がついた1人のお姉さんにより着せ替えタイムが終了。そして、やり遂げた感に満ちた顔で買った服を両手いっぱいに持つお姉さま方。

  

 え、それ全部買うの? この着ているフリフリワンピースも? それよりも、格好良い防具や武器は?


 そんな俺の思いは、虚しくも可愛らしい衣服へと変わってしまった。

 どうやら買った服達は、お世話になるギルドマスターの部屋に運び込まれるようだ。

 ちなみに、この世界では身寄りの居ない俺の為にギルドマスターが保護者代わりになってくれた。



『やったねオミたん、最強装備おめかしが一杯出来るよ!』



 コイツ、あとで埋めてやる!

 転生してから初めて、新たな目標ができた瞬間だった。


 服屋を後にし、俺の可愛らしい服装備を嬉しそうに抱えるギルド職員のお姉様方に両手を掴まれお昼ご飯へ向かう。

 道は綺麗な石で舗装され、木造と石造りのが混在しており日本では味わえない異国情緒いこくじょうちょ溢れる街並みが広がっている。

 おかしいなぁ……両手に花のはずなのに、なんでだろう全然嬉しくないぞ…………。



『挟まれてお手々を引かれるオミたんは、最高に微笑ましいですね!』



 どう見たって保護者に挟まれている幼女だよチクショーっ!

 これも全てテメェの所為だろ、この野郎!




『野郎ではないです、超絶美女の女神です』



 最初は、美人な女神が一緒に来てサポートしてくれると言うから、と期待してオーケーOKをしたのが間違いだった。



『もう、オミたんはエッチですねぇ……。でも……その姿なら、私は何されても構いませんよ?』



 黙れ猫モドキ! そんな体で何ができるっ!!!

 器用に頬を染める猫モドキにツッコミをしていたら更に疲れてきた。早くお昼でも食べながらのんびりしたい。


 そんな思いを引き裂く様に、悲鳴が聞こえてきた。



「キャーーーーーー魔族よーーーー!」


「魔族の襲撃だっ!」



 なに、魔族の襲撃!?

 これは早速、男らしく活躍するチャンス!



『今は幼女ですけどね』



 うるさい! 心はいつでも男なのだ。俺はまだ諦めないぞ!!!

 高鳴る思いとは裏腹に、一緒に居る職員のお姉様方は俺を連れて避難しようとする。

 くそ、非力な幼女の力では抗うのが難しい、っていうか出来ない……。

 かくなる上は、必殺――――



「あ、あそこに魔族!」


「「「えぇ!?」」」



 大声で適当な方を向いて叫ぶと、居もしない魔族に驚き手を離すお姉さん。

 なんてチョロい人達だ。しかし、お陰で自由に動くことが出来る。

 見当たらない魔族に怯え慌てるお姉さん達から、こっそりと離れて行く。



『まったく、嘘を付くなんて悪い子ですねオミたんは』



 横に付いてくる猫モドキが何か言ってくるが知らん。あれは必要な処置だったのだ。



『将来悪女にならないか、私は心配です』



 悪女なんぞにならんわ!? そもそも、俺は男だ!!!



『はいはい、そうですねぇ』



 くっそこの野郎ぅ……!


 ロリコン女神に対して殺意の波動に目覚めそうになりながらも、どうにか悲鳴の聞こえた場所にたどり着いた。

 元々居た場所が門の近くだったから良かったものの、幼女の体と体力では少しキツイ。



『なんだか……薄らと汗を滲ませながら喘ぐ幼女って、エロティックですねっ!』



 ほんと、もうヤダこのロリコン!



『まぁまぁ、そんなツレナイ事言わないで。ほら、魔族と一発触発の場面ですよ?』



 女神の言う通り、武器を構えた男女の集団が門を挟んで対峙していた。

 門の外側の集団は羊の様な角が生えており、数は内側の倍以上の人数が居る。

 街側には、見覚えのある後ろ姿もチラホラあるな。



『あの角が生えた人達が魔族ですね』



 これ、ヤバくね? 勝てるのか?

 明らかに強そうだし、こんな姿幼女で勝てるのか……?



『大丈夫です。その為の私の加護ですから』



 こんなどうしよもないロリコンだが、腐っても女神の加護だ。

 未だにどんな物か分かっていないが、ここまで自信満々に言うのだからどうにかなるだろう。


 男は度胸! まずは格好良く登場だ。

 疲れた体にムチを打って、睨み合っている中央へ駆け足で駆け寄る。



「やーーーめーーーーてーーーーー!」

(その戦い待ったぁーーーーー!)



 なんだか俺のセリフが意訳され過ぎている気がするが、気にしている暇はない!



「たたかっちゃ、メーーーーーー!」

(俺も戦うーーーー!)



 オイぃぃぃい、どう考えてもセリフがオカシイだろぉ!?



『加護のお陰で、争いを止めようと健気にも駆け寄る幼女に! なんて健気けなげ!!!』



 くっそ、何かロリコンがのたまっているが気にしている余裕はない。

 駆け足で、お互いに睨み合っているど真ん中に到着したと思った瞬間――――



 ズザーーーーーッ



 見事に転んで、ヘッドスライディングを決めた。



『何もないところで躓き転ぶ! まさに幼女のみに許されたジャスティス特権!!!』


「ィヤぁ……」

(もうこの体嫌だ……)


『転んで涙目のオミたん……ぺろぺろ』



 格好良く駆けつけて、男らしく戦いを挑むつもりだったのに転んでしまうなんて…………。

 悔しいやら、恥ずかしいやら、膝小僧が痛いやらで涙が勝手に出てくる。あと、買ってもらった服を汚してしまって、お姉さん達ごめんなさい。

 そして、この俗物な変態ロリコン女神を誰か何処かに捨ててきて。



『オミたんひどぅい!? でも、そんなツレナイ態度が段々癖に――――』


「オミちゃん! なんでこんな危ない所に」



 そう言って変態女神の言葉を遮る様に、俺を抱き起こしてくれたのはギルドマスターだった。

 くそぉう、なんてカッコ悪い所を見られてしまったんだ……。

 知り合いの、それも美人にこんな姿を見られて悔しいやら悲しいやらで、また涙が出そうになる。

 俺は男だろ、我慢だ我慢っ!



『涙をプルプルと堪える幼女……ご馳走様です』



 ちくせう! 誰のせいだと思ってやがる……!!!

 しかし、今はこのロリコン女神に構っている場合じゃない。

 格好良く決め台詞を言って、今度こそ男らしく活躍するんだっ!



「たたかっちゃ、だめぇ!」

(ここは俺に任せてくれ!)



 だから全然セリフがちげーよ!? やっぱり~ロリコン女神の所為かっ!



『褒めても何も出ませんよ?』



 褒めてねーよっ!



「ハッ!? まさかオミちゃんは、私達だけでなく魔族すらも傷つくのが嫌で争いを止めようと! 涙まで流して……なんて優しい子なのっ……!」


「見知らぬ魔族の我々すら心配し気遣ってくれるその姿と心、なんと健気で尊いっ…………!」



 勝手に意訳されたセリフに、何故か感動して涙を流しているギルドマスター達と魔族達。

 なんでこうなった。



『それも私の加護のお陰ですね!』



 くそぅ……ありがたいはずなのに、そのドヤ顔が無性に腹立つ!



「そもそも何やら勘違いをしているようだが、我々はお主らに危害を加えようと此処へ来た訳ではない」


「ん? それじゃあ、あんた達は一体何しに此処へ来たと言うんだい」



 あるぇ~、違うの?



「我らが魔王様が、この街を見てみたいと仰られたから訪れたまでよ」



 魔族がそう言うと、後ろから黒髪の小さい巻角を生やした女の子が出てきた。

 その頭の上には王冠が乗っており、短いマントも付けている。



「これが、まおう?」



 予想外の事に、ちょっと鼻声になったセリフが漏れる。

 マントの下には黒色のドレスを身にまとい、少し眠たげな瞳は不安で揺れており、先程から受け答えしている老年の魔族の足にしがみ付いている。

 どう見ても幼女です。ありがとうございます。



「うむ、この方が我らが魔王様だ」


『黒髪角っ娘魔王たんキターーーー!』



 誰かこの変態を黙らせて。



「じーや、コヤツらは、妾をいじめるのか? 痛いのも嫌じゃが、妾は誰にも傷ついて欲しくないのじゃ」


「大丈夫です姫様。どうやらあそこに居る娘のお陰で、無駄な争いは回避出来たようです」


『それも、のじゃロリやったー!』



 本当にこんなのが女神でいいのか……おぉ神よ…………あっコイツがここの神だった……。

 足元で興奮している何かに遠い目をしていると、幼女魔王がこちらをジッと見つめてきた。心なしか、目が輝いて見えるのだが、気のせいかな。



「ほぁっ!」



 ほら、ほぁって期待の篭った声を上げてる!



『のじゃロリ魔王たんが、仲間になりたそうにコチラを見ている!』



 どうしよう、本当にそんな感じだ……どうする!?

 そうな悩んでいると幼女魔王がトテトテとこちらにやって来た。

 先ほどからギルドマスターの腕に抱き抱えられていたので、とりあえず下ろしてもらう。



「どうしたの?」

(なっ何か用か?)


「あの……そのぉ……」


『ゴクリッ』



 モジモジと恥ずかしそうにこちらを見上げる幼女魔王。

 っく……これがあと10歳年を取っていれば……! と思わずには居られない程の美幼女っぷりだ。

 すまない、幼女は守備範囲外なんだ。


 そんな俺の思いとは別に、なんだか周囲から生暖かい目線を感じる。

 特に魔王の後ろにいる魔族達からは、保護者参観で自分の子供の発表を見守る親の様な雰囲気がんばれ的なアレ



「わ、妾とお友達になってほしいのじゃ!」


「姫様ぁ、よくぞ言えましたぁぁぁぁ!」


「あの人見知りの激しい姫様が自ら! 今日は宴じゃああああああ」


『よく言えましたぁ!』



 辺りからは野太い声と黄色い歓声が上がり、ギルドマスター達も何故か「よく言えた!」みたいな雰囲気になっている。

 あと若干変なのロリコンも一緒になってるのはご愛嬌。


 おい、さっきまでの空気はどうした。


 そして案の定、周囲からは期待のプレッシャー勿論OKだよな?が寄せられており、もう俺には1つの言葉しか選べなかった。



「うん! よろしくね♪」

(アッハイ)



 この時ばかりは、この意訳に感謝した。



『いえいえ、どういたしまして』



 テメェじゃねーよ!



『だって、私の加護のお陰ですし』



 知ってるよ、このロリコン女神!!!



『もう、オミたんはツンデレさんなんだから』



 チクショーーーなんだか色々納得いかねぇぇぇぇ!

 俺の雄叫びは、心の中で虚しく響いた。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




 こうして、魔族との一発触発だった雰囲気はなくなり、魔族との交流も増え、より良い隣人といった関係に変わっていった。

 そして俺はというと――――



 「オミよ、次はあちら行くのじゃ!」



 友達になった幼女魔王であるヨルに街の中を引っ張られていた。



 「うちの英雄様は、やっぱり可愛いわねぇ♪」


 「そうそう。最近はヨルちゃんと楽しそうに駆け巡る姿をみると、今日も一日頑張るぞって活力が沸いてきちゃう」



 魔族との戦闘を回避した英雄として街の人々から感謝されモテはやされているが、何か違う!?

 俺が望んだのはコレじゃない!


 2日置きぐらいで、魔族の街から遊びに来るヨルの相手をするのが日常となっていた。






 何はともあれ、不本意なソレらは置いておいて、今回の事の顛末についてだ。



「そっか。それで魔王は、前王であるお父さんが死んじゃって、友達もいないで独りぼっちで寂しかったんだね」


「うむ……そうなのじゃ」



 と幼女魔王であるヨルの身の上話をギルドの近くのカフェで相槌うっていた。


 どうやら前魔王の死後、周りにいるのは我が娘の様に可愛がってくれる側近達だけで、彼らは寂しい思いをしているヨルの為に何かが出来ないかと考えたそうだ。

 そんなある時、



「人間の街に行けば、同じ年の子が居るかもしれませんね」



 と、側近の1人がポツリと呟いた。

 それを聞いたヨルは、



「妾……人間の街に行ってみたいのじゃ」



 と言い始め、ヨルの為に側近達が人間の街に来る為、色々と動き始めたのが今回の騒動の始まりだったらしい。





 ヨルの話を聞いていたら、いつの間にか周りにはギャラリーが出来上がっていたが、気にしないでおこう。



『ヨルたん……寂しかったね。ヒッグ』



 ギャラリーと一緒になって涙ぐんでいるロリコン女神も居るが、こちらも気にしないでおこう。 



「オミよ。いつまでも妾を魔王とよぶでない。妾と友達なのじゃから、ヨルと呼ぶのじゃ!」


「うん! ヨルちゃん」

(アッハイ)


『幼女同士の友情……ハァ、堪りませんね! ズビビビッ』



 あーあ……床にまで鼻水垂れてるよ。汚ねー。


 そう、女神の魔王をしてくれとは、魔王を倒して欲しいではなかった。

 そのままの意味で、詳しく言えばヨルの寂しさを紛らわせるのと、争いの回避だったようだ。


 俺の勘違いかよ!

 と言うか、それなら俺を幼女にする必要なかったよなぁ!?



『ヨルちゃんに友達も出来てハッピー。幼女2人の仲睦まじい姿が見れて私もハッピー。おみさんも女性にチヤホヤされて、まさにWin-Winウィンウィンですね』



 などと宣っていたロリコン女神は、先ほど神界からお迎えが来て戻っていった。

 ザマァァァっ!



『あぁぁぁぁぁぁぁ! 私の幼女オミたんとの癒しライフがぁぁぁぁあああああ!!!』



 と叫び声を残して行った。

 大変気分がスッキリしたとだけ伝えておこう。


 そして今は、



「えへへ、オミぃ~~~♪」



 隣で椅子に腰掛けながら腕にくっついて来る、異世界で出来た新しい友達の頭を撫でながら、何事もなく争いを回避出来て良かったと、つくづく思った。

 これだけは、あの女神に感謝しても良いかな。






 とりあえずロリコン女神も居なくなったことだし、気を取り直して第2の人生を楽しもうと思う。

 しかし、俺はまだ男としてチヤホヤされることを諦めていない。


 何故なら俺は気がついたのだ。


 美幼女なら、大きくなったら美人になるに違いない。

 そして美人なら、宝塚の男性役の様に男装でもすればヅカ王子っぽくなると考えた。

 そうすれば、女の体でも男らしくなってチヤホヤされ放題という訳だ。


 目指せヅカ王子ハーレム!

 待っていろよ、俺のハーレムライフ!!!


 俺の希望は、まだ終わってはいない。







 しかし、この時の俺は知るよしもなかった。

 厄介な永遠幼女の加護置き土産が残されていることを。



『オミたんは永遠の幼女ですしおすし!』



 ブルブル……女神の叫び邪念が聞こえた気がする……。

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