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「最近私と遊んでくれないって言うか」
「常盤さんが忙しいだけでは?」
常盤さんはIT系会社の社長で忙しく飛び回っていたりするらしい。ちなみに志麻は十九歳。遊ぶもなにも、親から少し距離を取っていても不思議じゃない気もするが。俺なんて高校卒業してからずっと一人暮らしだぞ。
「確かに私も忙しくしているけれど、それは昔だって変わらないし、それなのに最近は挨拶すらスマホのメッセージなんだよ? どう思う? 花菱君。私はもっと娘と仲良くしたいんだよぉ」
眉根がくっ付いてしまいそうなくらい悲しい表情だ。確かにメッセージだけの会話ってのは寂しいものがあると思うが。でも志麻だって年頃の女の子だぞ?
「もしかしてか「彼氏なんて居ない! いるわけないじゃないか!」
彼氏、は禁止ワードらしい。お口チャック。
「志麻に彼氏が出来てしまったら私は、どうしたらいいんだい」
「どうしたらって」
祝福してあげたらいいのでは? なんて、結婚もしていなけりゃ妹だっていない俺には、その心情をすべて理解する事は出来ないが、門脇君も言っていた。奈々子は嫁にやる気はない、と。なんとなく、そう考えると分かる気がする。娘ってのは可愛いもんだ。
「志麻はね、結婚十年目にしてやっと出来た子でね、とてもとても可愛いんだ。ずっとずっと奥さんと願っていた子でね、この世で一番大切なんだよ、花菱君」
「・・・はい。志麻ちゃんとの距離が、少しでも縮まるといいですね。なにか一緒に作戦を考えましょう」
俺が協力できることなら何でもするけれど、志麻の連絡先だって知らないし、パパに頑張ってもらうしかないけど。
「ありがとう、花菱君」
「とんでもない」
「君が彼氏だったら、言うことないんだけどなぁ」
おいおい、そりゃ犯罪だぜ、常盤さん。
「光栄です」
「本気だよ?」
その場を収めるためには得意の営業スマイルを披露するしかなかった。
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