第2話 登場人物紹介 〈第一章開始時〉

ヴァン

 バルムンクの死術士。冷静かつ合理主義的な人物であり異教徒……黒きスヴァルトと戦いでもその性格は如実に表らわれる。

 死術は外法であり、その使い手たるヴァンは咎人であること示すため首輪を付けている。

 外見は十代半ば、物語の中心人物。


テレーゼ・ヴォルテール

 頭領アーデルハイドの一人娘、十七歳。その儚げな容姿とは裏腹に性格はお転婆でおおざっぱ。

 武勇伝の多い反面、トラブルメーカーでもある。


アーデルハイド・ヴォルテール

 バルムンク頭領。かつて〈ザクセンの斬り姫〉と呼ばれる女侠客だったが、病により、往年の力量を失っている。三十二歳。


リヒテル・ヴォルテール

 アーデルハイドの弟にして副頭領。

 衰えた姉に代わって組織の切り盛りをしている。

 厳格かつ私心のない人物で、過去に咎のあった身内を粛清している。二十三歳。


グスタフ・ベルナルド・リューリク

 スヴァルト貴族。〈蜘蛛〉と呼ばれる策士であり、その汚い手口は同じスヴァルト貴族の中で有名。二十四歳。

 かつてバルムンクの世話になっていたが、裏切りの果てにスヴァルト侵略を誘発した卑劣な男。



バルムンク

 ザクセン司教区の中心、リューネブルク市のスラムを支配する盗賊団(ファーヴニル相互扶助組織)。独自の規範や規律を持ち、基本的に弱者の味方。

 そのため、腐敗が著しいアールヴ神官と比べて庶民の支持が厚いが、支配を進める黒きスヴァルトには目の敵にされている。


ファーヴニル


 元は盗賊など法の外に住むならず者……と言った否定的な意味合いであった。

 しかし十年前のスヴァルトの侵略時に、役に立たない法王軍を見限った民衆がならず者たる彼らに期待し、スヴァルト支配を覆す戦士、あるいは誇りを保つ侠客などいささか美化された意味で使うようになった。

 分かり易く言えば、その土地に定着し、その土地を守る冒険者(冒険してませんが)。

 一説によればファーヴニルとは悪竜の名前であり、バルムンクとはそれを討滅した剣の名前であると言うが、一般的には否定されている。


アールヴとスヴァルト

 グラオヴァルト法国を構成する二つの人種。

 人口の大多数を占め、自由と公正を尊ぶ、白きアールヴ。

 人口の二割に満たない少数派であり、秩序を維持しようとする黒きスヴァルト。 スヴァルト人は選民思想であり、階級差別を是とする嫌われ者だが、アールヴ人は自由な気質故、堕落しやすいという欠点があり、十年前のスヴァルトの反乱では少数派のスヴァルトに大敗。国の支配権を奪われる。

 現在はスヴァルトを頂点とした貴族政治が展開されようしているが、数の少なさゆえ思ったように改革が進まず、神官を中心とした制度自体は旧来のまま。


死術


 特殊な植物を触媒に扱う邪法。

 主に死体を操るその人間の尊厳を無視した業は当然のごとく人々の弾圧を受け、好き好んで扱う者は余りいない。

 ただし有用ではあるために、十年前の大戦ではスヴァルト側が使用し、大きな戦果を挙げたとされる。

 使用にはミストルティンと言う寄生植物の種や枝が必要。

 種を死体に埋め込み、枝で作った杖で操る。

 そのため、触媒の〈種〉、術を顕現させる〈枝〉の両方がなくては術は行使できないが、ヴァンはとある理由から杖無しで術の行使が可能である。

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