宝の墓標
まっすぐ北へ90キロ進んだジャック達がたどり着いた場所は
地図から見て取れる通りの、砂漠の湖を囲うように造られた街だったが
ジャック達が想像していたほどの大きさではなかった。
というか、むしろ寂れていて、貧しさすら感じるほどである。
街の中で、湖に近いほうの、いわば中心に位置する建物は金属製で
組み立て式の簡易的な構造をしていた。
それらは住宅や倉庫として利用されている様子だった。
湖から離れるほど、現地の資材を利用して建てられたと思われる
木造の建物が目立つ。
それらの建物には、商店や宿屋であることを意味する旗が掲げられている。
街の外側には、そういった対外的な商業施設が多く見られた。
そこは、典型的な移民の街だった。
ジャック達はそこで、ジャンク屋を見つけた。
大きなガレージのような店の中には、小さなショベルカーや溶接機がガラクタの合間に置いてある。
気のいいオヤジが経営する店で、鉄屑のデブリを
ジャック達が思ったよりも良い値段で買い取ってくれた。
「こんなの、何に使うんだい?」
ジャックが店のオヤジに聞いた。
「建物を建てたり、補強したりするのに使うのさ」
「このあたりじゃ、あんたらみたいのから買ったほうが安上がりなんだ」
なんでもこの辺りは、建材を乗せたキャラバンがめったに来ないらしい。
稀に訪れた時には、物資の少ない街の様子を見たキャラバン達が
ここぞとばかりに通常より高い値段で建材を売りつけていくそうである。
「その代わりに、最近はあんたらみたいなのがよく来るから助かってるよ」
「よく来る?俺たちみたいなのが?」
こんか辺鄙な場所に、同業者がよく来るという話を聞いて
不思議に思ったアツシがオヤジに聞いた。
「ああ。あんたらもアレを目当てに来たんだろ?」
「いや、俺達は通りかかっただけだが…」
言葉に詰まるアツシを見かねて、横からジャックが
「その、アレとやらの話、詳しく聞きたいんだが」
と聞くと
「ふむ…そうだな……」
店のオヤジが、ニヤリと目を光らせた。
その後一旦船に戻り、買い込んだ物資を倉庫へ積み込んだ後
ジャック達は空っぽになったトラクターと一緒に東へ向かっていた。
店のオヤジは、ジャック達が持ってきていたオヤジの好物のトマト一袋と引き換えに
自らがアレと呼んでいる物の場所を
ジャック達の地図に記してくれたのであった。
最も、それが何なのかまでは教えてくれなかったが。
「行ってからのお楽しみ、か……」
店のオヤジが言っていた言葉を思い出し、ジャックが呟いた。
トラクターの荷台で、コンパクトに体育座りになった機体の側に座り込んでいる作業員達に混じって
あぐらをかいて座っているアツシとジャックは
一緒に地図を見ていた。
赤いバッテン印が書き込まれたそれは
さながら宝の地図のようである。
見渡す限りの砂漠。
商業が盛んな星と、ガイドブックに書いてあったはずだが
どうやら、無理矢理大気圏を抜けて着陸したせいで
主要な都市からかなり離れた砂漠地帯に着陸してしまったらしい。
「こんなところに何があるってんだー…」
ジャックが青い空を見上げながら愚痴をこぼす。
その横で、
「やっぱりやめときゃよかったかな…」
とアツシ
乾いた風がふいていた。
「引き返すかぁ?」
「でもあとちょっとだ、何があるのか見るだけ見てみよう…」
などと話し合っているうちに、目的地であると思われる場所が見えてきた。
まだ離れた場所にあるにも関わらず
地図で確認せずとも、恐らくそれが
店のオヤジが言うところのアレであることが分かった。
それほどに巨大だった。
近づくほどに、目に写る大きさが
大きくなっていく。
しばらく行くと、一行は"アレ"の足元に到着した。
「こいつは、スゲぇや…」
"アレ"を間近で目にしたアツシが
感動のあまり呟く。
ジャックや、ついてきた他の作業員達も
それを見て目を丸くしていた。
店のオヤジが場所を教えてくれた
"アレ"とは
かつての戦争の後に廃棄され無人となった
巨大な、多脚歩行型の移動要塞だった
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