第2話
【バラバラ殺人】殺してもらいたい【バラバラに棄てて】
というスレッドを仁菜は立てた。
すると反応はすぐあった。
12 名無しさん
本気で言ってんの?すぐ殺されてバラバラにされちゃうよ?
17 名無しさん
>>1は女性なの?
20 1です
女性です。かなり真剣に考えてます。ただしバラバラにして、色んなところに棄ててもらいたいのです
21 名無しさん
ただバラバラにしたいひとならたくさん居ると思うけど色んなところにすてるのは面倒だね。
23 名無しさん
>>1よ、やめておけよ。まだ若いんだろ?何も好き好んでバラバラ遺体にならなくたっていいじゃんか。
25 名無しさん
>>1あたまおかしーんじゃね?
27 名無しさん
仮に>>1をバラバラにしてあげて、バラバラのところに棄てた場合、その報酬は?
28 1です
>>27 考えてませんでした・・・。あくまでバラバラにしたい人の欲をわたしで満たしてもらえればという、ギブ&テイク的な考えでした
30 名無しさん
バラバラにしたら結構罪重くなるよね。>>1は死んで楽になるんだろうけど、やる側の人かなりヘビーだよ?
ここまでは順調に話し合いは進展していたかのように見えた、しかしこの後スレ荒らしが入ってきて、スレはほぼ機能しなくなってしまった。
仁菜のスレッドは荒れに荒れた。内容が内容だから、煽る人も居れば馬鹿にする人も居た。仁菜はそれを黙ってみていた。
それもようやくほとぼりが冷めたころ、再び静寂が訪れ、話し合いの場が設けられた。
536 名無しさん
やっといなくなったっぽいね、荒らしさん。>>1さんいる~?
555 1です
>>536 居ますよー
560 名無しさん
まだ気は変わってないのか?
580 1です
>>560 まだバラバラにされてバラバラに捨てられたいです
589 名無しさん
あの・・・横からいいですか?
590 名無しさん
どうぞどうぞ
593 名無しさん
俺は、この世の中に絶望して、刑務所に出来るだけ長く入りたいと思ってるんだけど、もしかして需要あるんじゃないかな?
594 名無しさん
救世主キターーーーーーーーーーーー
595 名無しさん
キタ━━━━━━━━!!
596 名無しさん
メシア現る
597 名無しさん
キタアアアアアアアアアアアアアアアアア
601 名無しさん
殺人に加えて死体損壊そして死体遺棄だからね、かなりの刑になると思うよ。それこそ何十年とか。
606 名無しさん
俺には都合がいい。
610 名無しさん
どうなの>>1さん!!
620 1です
>>593 ちょっとお話しましょう。とりあえずコテつくって
625 シン
じゃあこれで
630 名無しさん
シンさん本当に長い間刑務所に入りたいの?過酷だよ?
636 シン
俺にはこっちの世界の方が過酷だから
640 1です
わたしをバラバラにしてくれて、バラバラに棄ててくれる?
645 シン
それで刑務所入れて、それが望みならそうするよ
654 名無しさん
やめとけよーー犯されてぽいがオチだぜーー
660 名無しさん
肉便器はどこですか
667 名無しさん
最後におれのディルド試さないか?
675 1です
本当にバラバラに棄ててくれますか?まとめて棄てられるのだけは絶対いやです!
680 シン
それは綿密に計画を立てないと難しそうだね。これから考えていく。ご希望通りになるべく近付けるよ
686 名無しさん
サイコパス現る!
695 名無しさん
サイコパス気取りかもよ?
670 シン
俺はサイコパスとかじゃないよ。ただ刑務所に入りたいだけ
678 名無しさん
じゃあそんなめんどくさいことしなくても刑務所は入れるんじゃないの?
681 シン
出来るだけ長い間入っていたいんだ。猟奇的なことするしかないだろ
686 名無しさん
その猟奇的な部分シンさんが持ち合わせているかどうかだよね。つまり、できるかどうか。
690 名無しさん
人を切断するってすごい大変らしいじゃん
710 名無しさん
骨も断たなきゃいけないんだぜ?結構力も要る。
715 1です
そろそろ1000ゲッターの人たちが押し寄せてくるのでわたしは捨てアドさらします。シンさん連絡ください amm@me.com
720 シン
わかりました
724 名無しさん
次スレ立てるの?
730 名無しさん
とりあえずいいんじゃね?
744 名無しさん
じゃ、撤収ねー
800 名無しさん
・・・1000ゲッターはまだこねえよ。
巨大掲示板でのやり取りは終わった。シンあてに書き残した捨てアドには何通かメールが着ているようだった。
仁菜は一通一通すべてに目を通した。
体目当てなものが多数だった。死ぬ前にやらせてという。
シンから着たメールは他のメールとは明らかに違っていた。
1さん
もし本当に殺されて、バラバラにされて、そしていろんなところに棄てられたいのなら、俺はそれに協力します。
でも俺でいいんですか?
俺ならやります。刑務所には入れるならなんでもやりたいけど、
出来るだけ迷惑はかけたくないと思っていたので、望まれてやるなんて願ったり叶ったりです。
俺のメールアドレス書いておきます。こっちでゆっくり作戦立てましょう。
最後にメールアドレスがしるされており、メールは終わっていた。
仁菜はこれを読んで考えた。この人になら任せられるかもしれない。なんとなく誠実さも感じられるし、信用も出来そうだと、そう思った。仁菜は早速シンあてにメールを出してみた。
シンさんへ
こんにちは。1です。わたしの名前は仁菜といいます。
わたしは体中にちりばめられた悲しい気持ちをばらばらにして遠くにやってしまいたいのです。
わたし自身バラバラになって、もうわたしには戻らないように別々のところでひっそりと棄てられたい。
わたしはただの肉片になりたいんです。なんにも考えない肉片に。しかもバラバラのところにあって、もうわたしに戻すのは困難っていう状況が最高に好ましいです。
バラバラに捨てることを成功させるには、シンさんの手腕に掛かっています。
わたしはバラバラにされたらもう動けないから、その後はシンさんに頑張ってもらうしかないのです。
それを面倒くさがらず、やってくれますか?
肉片を持って移動するわけですからリスキーです。そして目的の場所にきちんと棄てられるか、これも難しいです。
これらを行うためには、綿密な計画と綿密な下見が必要だと思います。
シンさんにそのようなお時間はございますか?
仁菜さん
俺の本当の名前は真一といいます。
仁菜さんがそこまで望んでいるなら、俺も男だから最後までやり遂げたいと思います。
ただ、仁菜さんが言うように、綿密な下見は必要だね。勿論計画も。
恋人同士を装って、下見しないとすぐ怪しまれますよ。
そこが俺は心配です。
真一さんへ
そうですね。まず年齢伺ってもよろしいですか?わたしは24で、都内に住んでいます。
仁菜さん
俺は26で、同じく都内に住んでいます。田舎の方だけど。
真一さんへ
では一度顔合わせしましょうか。都内のどの変なんですか?
仁菜さん
俺は武蔵野市に住んでます。でも都内なら大抵どこにでも出られます。
真一さんへ
じゃあ初めて会うので、人がたくさん居るところにしましょう。今度の日曜日3時ごろ渋谷で如何ですか?
仁菜さん
渋谷了解しました。電話番号かLINEの交換もしたほうが・・・。顔判らないし
真一さんへ
そうでした。LINEのIDと電話番号書いておきますね。
これで二人のメールは一旦収束した。仁菜のLINEに真一がスタンプを押して、二人は繋がった。殺人鬼になりたいという真一と言う男は一体どんな男なのだろう。仁菜は想像もできなかった。
真一もまた、バラバラにされたい女のことなんて想像も出来てはいなかった。
二人が顔合わせをする日がやってきた。仁菜はいつものパーカーにズボン、髪はたらしたまんまというスタイルで渋谷へと向かった。
まだ電車に乗っているとき、真一からLINEが入った。
「人が多いので井の頭線の下でどうですか」
ハチ公よりかはいいと思って「そうしましょう」と仁菜は返した。
「着いたら教えてください。俺もう居ますから」と再びLINEがきて、電車を下りたばかりの仁菜は慌てた。走って井の頭線の下へと向かった。
着いてすぐ「今つきました」と息を切らしながら送信すると肩を叩かれて「仁菜さん?」と直接呼ばれた。
顔を上げて声の方を見た。「真一さんですか?」「はい」そう答えた男性は、背は高めで細見、こぎれいな感じの印象はよい男性だった。
真一も仁菜を観察した。顔は可愛らしい。が、女子特有のねちっこさは感じられない。化粧っ気も無い。
「あ、この度はどうも・・・。変なこと頼んでしまうようで・・・」
仁菜がそう言うと真一は「それはお互い様でしょう」とすこし笑った。仁菜は笑わなかった。
二人は暫くそこで立ち話だったが、「どこかお店入りましょうか」と同意しあって店を探し始めた。
「おなかすいてます?」
仁菜が訊ねた。
「いえ、お昼べたので」
真一が答える。
「じゃあ軽くドリンクがあるところにしましょう」
仁菜はそういい、ドトールかなんかないかな、と思った。
「あっ」真一が「上にスタバがありますね。空いてるかどうか判らないけれど」
「じゃあスタバいきましょう」
そういって二人はエスカレーターを上っていった。
スタバは丁度二席空いていた。
仁菜は紅茶、真一はアイスコーヒーを購入した。
テーブルを前にして初めて向き合う二人だった。
暫く沈黙が流れた後、真一が口火を切った。
「歳も近いことですし、やろうとしてることもそれなりのことなので、敬語はやめましょう、あ、やめよう」
仁菜は「わかった」と背もたれに寄りかかり、紅茶をすすりながら言った。
仁菜の身長は158である。小柄か、普通の体系だと感じられる。太っては居ない。
真一は背が高く、眼鏡をかけているが、それは目が本当に悪くてかけているのか、はたまた伊達眼鏡なのか、判らないようなデザインだった。顔はなかなかにイケメンだった。髪の毛は耳くらいまであり、ふんわりしていた。
「その眼鏡、度入ってるの?」
仁菜が効くと真一は「一応ね」といった。どうやらおしゃれさんのようだ。
こんなパッと見おしゃれさんが、殺人、遺体損壊、遺体遺棄までをやろうというのだから、世の中人は見た目では判らないものだ。
仁菜の方だってまさか殺されるのが欲望で、バラバラにされたがっているようにはとても見えなかった。
仁菜と真一は、極普通の若者同士だった。
「思ったんだけど・・・」仁菜が口を開いた。
「ここでバラバラとか損壊とか話し合えないよね?」
低い声で静かに仁菜はそう言った。周りは人で賑わっている。だれも死体損壊についてなどは話していない様子だった。
「そういわれてみればそうだな」
真一もその盲点にやっと気づいた。
「これからはうちにきて。その方がいい」仁菜が言った。
「今からでもいける距離だよ。ちょっと電車乗るけど」
どうする?と仁菜が問いかけた。
真一は少し考え「折角会ったんだし話を少しでも詰めよう」と乗った。
スタバで殺人計画はハードルが高すぎたのだ。二人はお店を出た。
仁菜のうちは井の頭線沿いだった。真一も吉祥寺まで井の頭線なので、二人は案外近い場所に住んでいると思われた。
各駅の井の頭船に乗りすぐ降りた。駅からは7分くらい歩いたところに、仁菜のアパートがあった。
「あんまりきれいじゃないけど・・・」仁菜は言った。
「おじゃまします」と上がる真一の足元にはスリッパが用意された。「ありがとう」「いいえ」仁菜は笑わない。
真一がスリッパを履き、中に入るとこざっぱりとした部屋が広がっていた。
無駄な装飾はなく、でも洗練されていて居心地がいい。そんな部屋だった。
「ここなら大きな声で死体損壊の話できる」笑わずに仁菜が言った、真一は笑った。
「まず訊きたいのはさ、詳しい理由だよね。なんでそこまでバラバラになりたいのか」
クッションを介して床に座った真一が、ベッドに腰掛けた仁菜に問いかけた。
当たり前の疑問だろう。
仁菜は、話さなきゃ駄目か、と少し思ったが、それもしょうがない、話そう。とベッドを立った。
そしてサイドテーブルに飾ってある写真を真一に渡した。
「わたしが初めて好きになった人。18のときから付き合って、20のとき、死んだ」
無感情に仁菜が説明すると、真一は面食らったようだった。
「それから4年経つけど、まだわたしの体中に悲しい気持ちが散らばっている。わたしはこれを木っ端微塵にしたい。それにはわたしがバラバラにならなきゃいけない」
真一から写真を受け取りながら、仁菜は言った。
写真を元の場所に丁寧に戻すと、仁菜は続けていった。
「わたしは今なんとなくでしか生きてない。生きようと思って生きてない。笑いもしないで、まるでただ生きてるだけ。未練は無い。それよりはやくバラバラになって飛び散って死んで、彼の元に行きたい」
真一は黙って聞いていた。
「・・・それでバラバラにねえ・・・」
納得したのかしてないのか、どっちともとれるような言い方だった。
「棄てる場所に希望はあるの?」
「それぞれが遠く離れてる方がいいってくらいかな」
「なるほど」
「殺害と切断はここのお風呂借りていいんだよね?」
「いいよ」
「じゃあ移動といざ棄てるときに細心の注意を払わないと」
真一は少し考えた後「ちなみに何等分くらいがいいの?」
そういわれて仁菜も初めてそのことを考えたようで「えー」と数え始めた。
「足は二等分だから合計4個、手は二等分だから4個。首は首で1個、体は・・・二等分でいいかなあ?」
だって体切るの大変でしょ?仁菜はそう言った。
確かにそんなイメージはある。
二人のうちの誰も正解は知らないけれど。
「じゃあ全部で11パーツってことだね」
「ということはー」
「全部で11箇所棄てる場所を決めないといけないってことだ」
「11箇所・・・。めちゃめちゃ多いね」
人事のように仁菜は言う。自分の体がその11箇所にちりばめられるというのに。
「本州をぐるっとする感じかな・・・」
真一が何気なく言った。
それを聞いて仁菜が「なんかすごい悪いね」と言って考え込んだ。
「あっ」
ひらめいたように仁菜が言った。
「両手両足の同じパーツ同士だったら同じ場所に棄ててもいいよ」
「ほう、そうなると、・・・7箇所になる」
「あとね」
「ん?」
「頭は棄てないで、どこかに置いておいて欲しい」
「置くんだ。じゃあ6箇所で済む。棄てるのはやっぱり池とかがいいの?」
「うーーん、悩んでるところ」
「特にその辺のこだわりは無いんだね」
「今のところは」
「OK」
ディープな話をしているからだろうか。気がつくと仁菜と真一の二人はかなり仲良くなっていて、もうずっと前からの友達同士みたいになっていた。
「頭はどこにおきたいの?」
「うーん地元の方がいい気もするし、全く違う場所の方がいい気もする」
「定まってないのね」
「うん」
「じゃあ仁菜ちゃんの宿題は、自分のどの部分をどこに棄てたいか、これね」
「うーーん、まようー」
「自分のことでしょ」
「うー・・・ん」
暫く仁菜は考えた後
「行ってみないと判らないよ」と言った。
「じゃあ近いうち巡ってみようか?候補地。候補地は作っといてね」
「わかった」
珍しく仁菜が笑ったように見えた。
「殺害され方はどなんのがいいの」
またディープな話題である。スタバではこんな話はとても出来ない。
「首切りがいい。一瞬で死ねるんでしょ?生きたまま首切って、まず首のバラバラに成功して?」
「ハードル高っ」
「残虐性が増すよ?」
また仁菜は少し笑った。
それを確認すると、真一も笑って「そうだな」と言った。
今の二人の関係はこうだ。
仁菜:殺されてバラバラになりたい
真一:仁菜を殺してバラバラにし、棄てる。刑務所に入りたい
このたったひとつの利害関係だけが仁菜と真一を結び付けていた。
それ以外は何も無かった。
真一が帰った後、仁菜は遺棄する場所について考えた。
頭は都内のどこかにそっと置いて欲しい。インパクトがある。二の腕は湖がいいな、矢張り。
指先があるほうの腕はどうしよう。今している指輪をしたまま棄てられたい。水の中だと折角細い指がぐずぐずになちゃうかな。
手先は神社の軒下にでもごろんとしてもらおう。
問題なのが体ね、でかいからね。これはもう錘をつけて海に沈めるしかないかもしれない。三浦海岸がいいな。あとは東京湾、横浜港が候補。
足はなんとなく西の方がいい。
腿は矢張り湖かな。出雲の方の神西湖ってところに何故か惹かれる。
足先は軒下にごろん。
こんなところだろうか、と仁菜は考えた。
コレが叶えば、文字通り仁菜は散り散りになる。それは仁菜にとって心躍ることだった。わたし、バラバラになって、西へ東へ散り散りになる。もうひとつの人間に戻ることは無い。素敵。早くその日が来ないかなあ。仁菜はそう考えていた。
真一は、印象は悪くなく、喋ってみて中身も全く悪くなった。
シャワーを浴び終え、体を拭いているときに考えた。本当に刑務所なんて入りたいのだろうか。今度、理由を聞いてみなければ。それを知らずして頼めるような案件ではない。
仁菜はやり残したことがないか考えてみた。
・・・親にお礼かな。
これは気が向いたらしよう。
あと遣り残したこと・・・同棲、かな。
家族以外の他人と暮らすという経験くらいしておきたかった。
どんな感じなのか見当もつかない。
そこでぼんやりと候補が浮かんだ。
・・・真一さん。
真一と最後の少しの間、一緒に住んでみたい。どうせ一緒に終わりを迎える二人なのだし。
誰かと住む楽しさや煩わしさを味わってみたい。もうすぐ人生終わる同士楽しそうでもあった。
さて、次の日も仕事だ。
今日も早く寝なくては。
そう思い、濡れた髪を乾かすとベッドへと潜り込み灯りを消した。
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