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そんなイライラする学校生活の中での唯一の安らぎとも言える存在が、三津川という同級生だ。彼もまた僕と同じ吹奏楽部員で、フルートを担当している。そしてこの僕のイライラを理解し、彼もクラスメイトや顧問の考え方に対して憤りを感じていた。僕の良き理解者だ。
『ったく、2年も後半に入ったってのに全員が部活命だなんて思ってるはずないっての』
「やっぱりお前もそう思う?」
『だってオープンキャンパスも結局行けたの2校だけだったし、それも速攻帰ってきて部活出たし』
「部長もさ、『みんな我慢してるから』とか言うけど」
『そんなんじゃ僕ら浪人だよ』
「なー」
こうして鬱憤がたまると三津川と人気のない喫茶店で珈琲や紅茶を啜りながらストレスを発散するのである。まあ、完全にはストレスはなくならないが、ガス抜きにはなる。三津川がいなかったら僕はとうに壊れていただろう。
三津川とそうやって駄弁っていると、からんからん、と喫茶店のドアについたウェルカムプレートが揺れる音がした。僕達と同じ学校の制服を着た、疲れきった顔の女の子が店に入ってきた。
入ってきた、というよりは倒れ込んできた、という感じかもしれない。呼吸が乱れていて、とても辛そうだ。
僕達はマスターと共にその女の子にかけより、背中をさすったり、大丈夫か、と声をかけたりした。
しばらくすると呼吸は整ってきたようで、ほっとしていた。すると、突然
「…んで、わた、し、が…!……」
と女の子がうなされていた。
僕達は、初めて出会ったこの女の子を、何故かこの喫茶店に置いて勘定を済ませられなかった。
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