今夜は骨折芸人
笑福心経の一説
面白人間(オモシロニンゲン)
……ボケの方法
おもしろいネタより、面白いキャラクターになる事を優先する
「僕達、骨折芸人でーす」
芸人達が冒頭、声を合わせて番組の収録が始まった。
テーマに沿ったお題で話をする番組、今日は骨折をテーマに芸人が集まっている
俺は学生の頃に骨折経験がある
今回、その経験が生かされ呼ばれる事になった
順番に話を振られて、収録は進行する
「家族がみんな骨が折れ易いんです
骨折家族です」
「笑った勢いで、肋骨折った事あります
家族でテレビ見てて、母と俺が同時に肋骨おりました」
「それは、うそや」
「そうです、嘘です」
「話の骨格、よわすぎやろ」
「足の骨折りました
変わってるのが、治りそうなところでもう一回折った事です
長期入院ですよ
いい骨休みになったんですが
会社の人に『骨も休み休み折れ』って言われました」
「会社の人おもしろい、ヤバい、肋骨折れそう、折れそう」
「引越しのバイトをしていて骨折しました
お皿をクッションで包んで梱包して行く作業です
座ってやる作業なんですけど、体勢を崩して後ろに手をついたら、
骨折してました」
「社員の人に言われました
引越しやねんから他に危険な作業たくさんあるやろって、
ちょっとした骨の折れる作業でホンマに骨折るなって
『俺よりおもろいなー』って思いましたね」
どの芸人も、この日のために話を仕上げている
俺の番や
「嘘みたいな、折れ方したんです」
「すれ違う人とぶつかっただけで折れたんです」
「ぶつかって『いたたたたたたー』っていったら、相手がめっちゃ怒ってました」
「『いや違うんです、あたりやじゃないんです・・本当に折れと思います・・・』」
「たいへんやったんですよ、相手にレントゲン見せるまで」
「でも、骨折で良いところは、学校で有名人になれるとこなんです
ちょっと無理して学校行った方がいいです
みんなが心配してくれます
『カバン持ったろか?』『飯食えるかー』って言うてくれます
それが嬉しいんです」
「でも、ギブス外すともう、すっとおらんようになるんです
もう一回、折れんかなって壁に肩ガンガンぶつけるんですよ」
「折れた骨って強くなるんですよね、全然折れない」
少しだけウケた
それから大分、場が荒れだした
「やっぱり、唐揚げは骨がついてないとダメですよ
骨が無いんは、ホンマ骨抜きですよ」
「南こうせつ(骨折)はやっぱりええな」
「骨言いたいだけやろ」
「さすが骨のあるツッコミ」
「話の腰骨おるな」
「腰でええわ」
「お疲れ様でしたー」
声が響き、気が抜けた
収録が終わった
楽屋に帰ると、少し神妙な面持ちで後輩が話しかけてきた
「ちょっと今、いいですか……」
俺の相方が心配しているという話だった
確かに、こいつは俺の相方と仲がいい
相方は、最近始めたお笑い教をよく思ってない
騙されているんじゃないか心配している
でも、少し話すれは、事態は落ち着くとも思った
「そうか、わかった。教えてくれてありがとう。」
しかし、後輩は言う
「お笑い教について、僕にも教えて欲しい
最近、福島さん面白くなりました
お笑い教が関係してるんでしょ
復帰してからです
私もそうなりたい」
「ええで」
そう答えた
相方以外にも坊主頭になった自分に、抵抗を持つ人がいた
そんな中でこの提案は嬉しかった
いや、骨身に沁みた
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