病からの復帰

笑福心経の一説

 皆種記帳(カイシュキチョウ)

 ……ネタの探し方

   ネタはすべてメモる、書いて意識すれば気付く事ある





あれから、お笑い教の寺院に通うようになっていた


「病はいいものではありませんが

 才能のあるお笑い芸人ほど心を病んだりします」

「星のめぐりが原因の場合があります」

「激しい活動を落ち着かせる一つの方法は

 毎日、習慣を持つことです。

 お経もその一つです

 お笑いの技術を高めるためと言っていますが

 これは、活動を落ち着かせる役割も果たします

 これは、昔からある宗教の知恵です」

「お笑いの神様とは仲良く、折り合いをつけばければいけません」


だから自信を持てと、ぼちぼち頑張れといつもこの人に言われる



復帰後、最初の仕事はいつもの劇場の舞台から

姿を現すと一段と大きな拍手が起こったので、

気が楽になった



「どうもーー、心配かけました

 前より元気になって帰ってきましたよーー」



一通り挨拶をすると

相方が病気の症状を説明してくれた


入院の間、ネタは探していた



「入院生活ってどんなん」

相方が話を振ってきた



「入院ってめっちゃ暇なんよ

 やる事がない

 でも、ちょっといい出会いがあったんよ

 キレイな看護師さんがおったんよ

 メガネかけてて頭良さそうな感じ

 超タイプ

 藍ちゃんって言うんやけど

 会うと必ず

 『体調どうですか?』って聞いてくる」



「それが仕事やからね」



「俺の事気になるんかなー

 俺の事好きなんかなーって思ってしまうんよ

 で、ちょっと好きになってしまったんよね」



「それは、まずいな」



「ちょいちょい診察室に呼ばれて2人きりになるんよ

 そこで『リラックスしてください』って言われるんよ

 そのあと、必ず血を抜かれるんやけど

 もうドキドキしてくるんよ」



「採血してるだけやな」




「ベットで、2人で話す時の練習をするんやけど

 すっごい盛り上がるんよ、

 向かいベットに、明るいおっちゃんがおるんやけど

 『お前ら付き合ってるんか?』って聞かれるくらい

 2人で『困ったね』って答える想像をするんよ」



「独り言、あふれ出しとるやないか

 おっさん、こわかったやろうな」



「俺はどうしても、仲良くなりたかったら

 勇気だして『彼氏おるんですかか?』って聞いたんよ

 『もうすぐ結婚します』って」

 なかなか落ち込んだ」



「でも、ちょっと間して、また新しい看護師さんが入ってきてたんよ

 今度は茶髪で、ちょっと色黒でやんちゃな感じが可愛い子なんよ

 毎日、『体調どうですか?』って聞いてくれるから

 俺の事気になるんかなーって思いだしたんよ」


「藍ちゃん通ると

 藍ちゃん可愛いですよねって

 そうやないんや

 あれは、昔の女なんや

 俺の気持ちわかってくれへんかなって」



「ほんまに楽しそう」



「後輩が、退院祝いしてくれるんやけど

 また入院したいってはなしたら

 そういうお店あるって」



「すごいあほな話やったけど、

 元気になってよかったわ」



まぁまぁウケた

多分、復帰祝いも含んでる

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