お笑い教のお経
私は、宗教というものが好きでない
神も仏も信じてない
家族が亡くなれば、お坊さんを呼んでお葬式をするつもりだが
必要以上に熱心に信仰する人間が理解できない
少し聞く新興宗教の話
財産をすべて寄付したとか
教祖が色んな信者と性交渉をするだとか
信者が非合理的な事をする話は、本当に気持ちが悪いと感じている
目の前で、仏壇の入ったリュックを背負った男が楽屋へ入ってきた
男は私の相方なのだから辛い
仏壇を丁寧に取り出して開帳する
そして、いつも通り、お経を読み始める
なんて非合理的な行動だと毎日思っている
そして気持ち悪い
今日は、お経を読み終わるのを待って、少し話をする事にした
ダイレクトに伝えるのではない
間接的に、穏やかに話した
「毎日お経を読むんは大変じゃないか?
少し休んだらどうや
お経せんかったからって、スベるもんでもないやろ?」
お経を読み終えると、相方はスポーツ新聞を見ながらメモを取り出した
そして、答える
「いや、スベるんや」
「なんでや、お笑い教の神様が怒るんか?」
相方はメモを取るのを止めた
怒ったかと思った
「いや、そうやないんや
ただ意味なくお経を読んでる訳やない
お経の内容には、意味があるんや
まあ、お経っていうもんは、その意味を思いながら読むんよ
その意味っていうのが、要は人の笑わせ方みたいなもんなんや」
「方法はたくさんあるし、覚えたって舞台でとっさにできるわけじゃない
毎日お経を読むのは、その内容を舞台で表現できるように体に覚えさせるためのものや」
まともな回答だった
「ふーん」
「そうやな、例えば
お経の一文に、家族自型(かぞくじかた)というのがある
家族の型式は自分のネタになりますよっていう話
型式っていうのは、ステレオタイプの事や
自分の家族の事はよく知ってる、変わったステレオタイプもなんかある
そこに注目すれば笑いのネタは見つけられる
生活の中でネタの見つけ方に関する内容やな」
相方が力強く話す様子に圧倒された
話しは、なんとなくは分かったような気がした
仕事が終わった
今日もよくウケたと思う
相方は、やはり、坊主になってから調子がいい
他の演者をいじるのうまくなった
発言する回数も増えた
お笑教の効果は本当にあるのかもしれない
相方は両親と住んでいる
生活の中で得たオカンの話が特にウケた
勝手に服買っててくるし、勝手に部屋をかかたずけられるという話
そして、オカンの癖の話
「うちのオカン
嘘つく時に絶対にする癖があるんよ
せやから何でも俺にはバレバレなんよ」
「嘘ついてる時
絶対、ごっつい怒るんよ
ホンマにで分かりやすい」
「ただ、ちょっと今、気になる事があって」
「この前、冗談で
俺、ホンマはお父さんの子やないんやろって、オカンに言うたら
ごっつい、今まで見たことない勢いで怒られたんよ」
「俺どないしたらええんやろ」
「飯食うてたら、どうしても親父の顔をチラチラ見てしまうんよ」
会場は爆笑につつまれた
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