坊主の訪問

家のチャイムがなった


玄関の覗き穴をみると

相方がいた

その後ろに後輩芸人とその相方が、合計3人


みんな、坊主頭で、今、玄関の前にいる


身の危険を感じた




チェーンをかけたまま扉を開けた

「お、お前か……、今日は仕事、休みよな

 あれ、なんや、後輩もつれて来てんのか」



相方は言った

「急に来て、すまん、少し話がしたかったんや」

言葉は穏やかだった





しかし、部屋に上がって相方が発した言葉にとまどった

「俺らの事、気持ち悪いと思っているんやろ」



・・・間が開いた



「・・・いや、全然・・」




「俺の事、心配してるんやろ

 いきなり坊主になって、仏壇祭って、お経あげてるから」



何も言えなかった



相方は続けた

「ええんや、俺らがやっているんはお笑い教って言うんや

 これは、お笑いの力でみんなを幸せにしようっていう『教え』なんや

 俺らお笑い芸人やろ

 そこまで変な事やないと思う

 別に変な奇跡を信じている訳やないで」



その話の内容に、少し安心した

「別に、お前が何を信じようが気にしてへんよ

 お前は、お前や

 自分の考えるようにしたらええ

 お前の信じたものを、俺は、あほらしいとは思わんよ」



場が和んだ



後輩が言った

「そうや、一度、教祖様に会ってみてくださいよ」

後輩の相方も言った

「教祖様の倫話を受けてもらうのが一番いい」


相方が言った

「どうや、一回、教祖様に会ってみいいひんか」




マジで、気持ち悪いと感じた

「ほんま、それだけは、勘弁してください」

気付けば、土下座をしていた




相方は言った

「すまん、そんなつもりやなかった」



そして

「驚かしてすまんかった

 でも話せてよかった」

そう言って、帰っていった




見送ったあと

鍵を閉めて、ドアにチェーンをかけた





そして、昔、仕事の事で悩んでいた相方を思い出した

相方は昔、ストレスで倒れて入院したことがあった

元気そうな現状を考えると、これで、良かったのかもしれない


少し、おおらかに見守って見ようと考えた

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