過去 1

当時の貴方はとにかくモテた。

決してプレイボーイではなかったが、当時流行りのスーツを貴方ほど格好良く着こなす人はいなかった。


貴方は過去に奥様を無くしたのか、どういう理由だったかは忘れたが、30代半ばで独身で、女性たちの憧れだった。


貴方が結婚相手を探している噂は私も聞いていたが、自分には全く縁の無いことだと思っていた。


貴方の方から直接結婚の申し込みがあるまでは。


貴方と私は今まで挨拶する程度の関係だったので、私は勿論、周りも非常に驚いていた。



私は若かったが、沢山の女性たちがあこがれる貴方がなぜ私を選んで下さったのか。最後までその理由を知ることはなかった。


結婚生活に特に不満は無かったが、貴方はとにかく仕事で忙しかった。


たまに外に連れていって下さると、貴方は男性、女性から声をかけられ、人望の厚さを感じさせられた。そして同時に自分が常に貴方の後ろで小さく感じていた。

周りの女たちからは、「何故あんなつまらない娘」と言われているような気がした。



妾の存在は結婚後すぐに気が付いた。お茶屋の中でも不動の人気があった美女だったが、結婚してもらったのは私だったという自信はあり、彼女のことはさほど気にならなかった。


彼女のところで用を足した後でも必ず私を求めていたのは女の感で解っていた。そして決して妾のところには泊まらなかったので、貴方から大事にされていた事は感じていた。次第にあまり彼女の所へは通わなくなり、貴方はどんどん仕事にのめり込んでいった。



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