第2話 兆候 -きざし-

意識の覚醒後、今朝と同じように思考を巡らせてみる。

無意識の世界はとても気分が良いものだった。

波音を立てずに息を潜め、周りの音とリズムに鼓動と身体を合わせ、コーラスを聴いている気分だった。

無機質で機械的な存在は触媒として役目を果たしているのだろう。

だけど周りはその空気に溶け込むような異質性を見逃すことはできないのだ。

普段あるべきものがそこにないと感じる異質性……

私は自分が思っている以上に期待されていたのだ。

無意識に期待を裏切っていたことは反省しなければならない。

でも周りを観察して思うのは、みんな自分の都合の良いことしか見ようとしない、理解しようとしない。

意識を良心。優しさだというのなら、優しさよりもっと理解しやすい偽善を欲しているのだと思う。

人は無償の優しさなんて理解できない、そんなもの誰も望んでいなくて…

代わりに見返りを求める偽善の方がわかりやすく優しさを形にしていて気分が良いのだろう。

私が世界に感じる境界線はこの事よりまた深く濃くなっていた。

気持ち一つで切り替わる、無意識と意識の世界はこんなにも対照的だったのだ。

だから悲しい。人と人に、世界に脆さと儚さを見ることが…

世界は人の都合の良いように造られている、作り物…

みんな自然体でいられるはずがないのだと思った。

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