銀河英雄は、羽目を外す
「イェェェェ!!!」
あらぬ限りの大絶叫。眼前に浮かぶは星の海。
聞こえはいいだろう。絶景とも取れるだろう。一見すれば、俺は現在置かれている状況に大変な楽しみを覚えているように見えるかもしれない。
「んなわけねぇだろうがばぁぁぁぁぁかぁぁぁぁぁ!!」
そう、そんなわけはない。通算ボッチ300万年記念、大声を出す大会を一人でしていたところだ。ちなみに80万年ほど、近くにあった小惑星に降り立ち、細い棒きれのようになるまで石を積み上げる遊びが、ようやく終わったことも記念しての絶叫である。人間、声を出さないままでいると、声の出し方を忘れるからな。たまには声帯を使ってやらんと。
「しっかしあれだな、声を出すことがこんなにも楽しいとは、思わなかったぞおい!」
むだに声を張り上げる。当然だろう。大声なんて、滅多に出さない代物なのだから。今なら当時のヒットソングを恥じらいもなく歌うことが出来る。思いついたので、パッと歌ってみる。音程も、ビブラートも、完璧に整えた俺の
「びっくりするほど悲しいし
ラブソングなんて歌うんじゃなかった。心の底からそう思った。目から流れ出るは大粒の涙。まだ涙は枯れていないのかと、自分でびっくりするとともに、なんかもうさみしくてさみしくて仕方のない気分になってきた。
例えるならそう、就職活動や受験を終えて、後は進学卒業の道に進むとき、俺はこのままでいいのか、もっと何かできるのではないか、この道で間違っていないだろうかと夜中に頭を抱えて震えるような、そんな感情が俺の中で渦巻いている。マジで誰かに抱きしめてもらわなきゃ俺死滅するんじゃないだろうか。そんな、心臓がキュッとなる感覚に襲われていたとき、俺の感覚が、ある波動をキャッチした。それは
「生……命!」
命だ。この宇宙に、300万年という長い年月をかけて、やっと俺以外の生命が誕生したのだ。まだ小さい、細胞レベルの生き物が、この宇宙のどこかに・・・・・・そう考えるだけで、俺は感動の涙が止まらなくなり、ついには大声を上げて泣……
命の波動が、消えた……なにか、別の大きなエネルギーに巻き込まれるかのように、消えてしまった。原因は何だ。大きなエネルギーは、今までそこに存在しなかったはずなのだ。何か原因があるはずだ。考えろ。一体何が……
Q.今まで俺がやっていたことは?
A.大声を出す大会。
Q.俺が大声を出すとどうなる?
A.強烈な攻撃力が生まれる。
「原因俺かよぉぉぉ……」
落胆と、悲しみと、其の他諸々が合わさって、俺は声を殺して静かに泣いた。
銀河英雄は、今日も暇を持て余す あきょう @Akyou
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