銀河英雄は、宇宙を駆ける

 ヒーロースーツについている、イオンスラスターを使用し、秒速20キロで宇宙を飛ぶ。理由は至極単純に、生命が埋まれているかを見て回っているのだ。暇している間に生命が誕生したら、そりゃあもう嬉しさのあまり、ずっとその生命の行く末を観察できるだろう。延々とシーモンキーを見ている感じが近いかもしれないな。


 だが、これを始めて20万年。いまだ生命の息吹を感じる星はない。もしやこれはあれか?俺がセッティングしないといけない感じなのか?いや、やろうと思えばやれるが、流石に自然の摂理に反したことはしたくない。まぁ、前に作った本格的電子レンジが自然の摂理を守っているかと聞かれたら口ごもるかもしれないが、だーれもいないこんな世界である。少々のオーバーテクノロジーくらいは笑って許してくれるといい。


 などと自分の考えたことに自分でツッコむという、あまりにも寂しいことをしている最中、宇宙のどこかで、次元の割れた衝撃が俺に走った。


 220万年生きて初めてのお客様である。俺は急いで次元の割れた場所を特定し、現場へ急行した。


 おいおい、まさかこのタイミングでお客さんが来たっていうのか?最高じゃないか。寂しさで死にそうなんだ。話し相手を、できれば不老不死の友人になりえるものを寄越してもらいたい。最悪子犬とかでも構わない。俺に比べてあまりにも短い、犬の寿命を見取ってまでも、心を埋めてくれる生物が欲しいのだ。このまま無気力無感動な余生を過ごしたくないのだ。やっとのことでついた先にいたのは


「ぎゃへぁははは!今日からこの宇宙は、未来永劫究極邪しっ」


 ……この宇宙を超長期的にわたって支配しようとしていたなんたら邪神だったようだ。俺はどこからともなく邪神の精神を取りだすと、手から発する必殺光線銀河ビームで消し飛ばし、ついでに邪神の体も殴ることによってその威力をすべて破壊エネルギーに詰め込めた超絶拳銀河ブレイカーで跡形もなく消滅させた。


 あー、うん、俺がどこから取りだせるものって、特に制限はないんだ。その気になれば、やる気とか、傲慢な心とか、筋肉を動かす電気信号とか、そんな概念チックなものも取り出せる。


 今読者諸君の中には、そんなに暇で、尚且つそれだけの能力を持っているのなら、友達の一人でも作ればいいじゃないかと考えた人もいるだろう。


 だがよく考えてほしい。自分の作った、最高の友達。この響き、なんだかやばい奴に聞こえないだろうか。イマジナリーフレンドの延長線なのではないだろうか。そう考えると、俺のプライドが許さないのである。だって、残り139億9780万年そいつと二人っきりで生き続けなければいけないというのは、流石に俺でも無理な気がする。絶対どこかで殴り合いの喧嘩のちに顔も見たくないから宇宙の果てに出も飛んで行ってしまえパンチが発動するだろう。自分で作ったやつに、そんな仕打ちをしたくはない。


 薫たちの世界を守るためとは言え、あの邪神を生け捕りにして遊び相手に出もすればよかったかなぁ、と、今さらながらに俺はため息をつくのであった。

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