銀河英雄は、趣味に走る
目が覚めると、そこは満天の星空の中であった……聞こえはいいが、単純に宇宙空間を
だからこそ、俺は危惧している。このまま何もせずに、ただのうのうと生きていたのであれば、俺は俺でなくなるのではないだろうか、と。それは嫌だ。激しく嫌だ。
読者諸君は不思議だろう、何故ここまで俺が意識を保とうとしているのか。
それは単純に、未来に飛ばした仲間たちに、もう一度会いたいがためである。特に俺の妻である
だからこそ、俺は某究極生命体のような最後は避けたいのだ。考えるのを止めて、宇宙を漂うゴミになることはたやすいだろう。だけども、俺はそんなことになりたくない。生きていたい。笑っていたい。死にたくない。
じゃあ何をしようかと考えたのち、趣味を持つのはどうだろうかと思い至った。ほら、よく言うじゃないか、認知症予防にも趣味を持つことが肝心だと。ではどんな趣味がいいだろう。まず多人数でやるものは除外だ。悲しみの極みで俺の脳みそがいかれる。で、この場にあるもので趣味を組もうとすると・・・・・・
武器、兵器の分解、改造。くらいか?
幸いにも時間はたっぷりあるし、少々改造には腕に覚えがある。いい機会だから、これを気に色々と覚えてみよう。幸いにも、時間はたっぷりあるのだからな!
と、意気込んだのがちょうど200万年前だったか。俺は今、何処からともなく取り出した兵器の数々を改造、変更、改良し、本格的電子レンジの製造を行っている。ただの電子レンジではない。本格的電子レンジだ。従来の電子レンジでは、分子を揺らして熱を発生させることしかできなかったが、この本格的電子レンジなら、物体の熱伝導度を強制的にあげて、物体を冷ますことが出来るのだ。世紀の大発明に俺のこころが踊り、さて冷やす物体はどれにしようかと周りを見渡して
何もない宇宙空間だったことを思い出した。近くに恒星の類はなく、当然、熱されたものも、冷やされたものもない。
すごく悲しい気持ちになった。それはもう、オイオイ泣いてしまうレベルで悲しくなった。周りに誰かがいた気がした。いや実際いたんじゃないだろうか。もしかしたら、俺の周りを囲んでいるこの機械たちが、俺を憐れんで幻影となって姿を見せてくれたのかもしれない。
俺のこころは、そう思ってられないとやってられないくらいに、疲弊していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます