第7話 人の余裕
この街は
季節を問わず浮かれてる
人の理性を緩めるのが
繁華街のなせる業の一つなのかもしれない
クリスマスだろうが
バレンタインデーだろうが
イベントを問わず浮かれてる
一人身も
カップルも
ビジネスマンも
学生も
老いも
若きも
みなこの街で浮かれている
浮かれた顔を浮かべた人は
とても幸せに見える
その最たるものが
カップルだ
新宿駅の中
若い男女のカップルが
キスをしている現場を目にした
人目を憚らない
恋に正直な行為だと
私は感じたが
全ての人が
私のように感じるわけではない
男の二人組は羨ましそうな視線を
破廉恥だと小声で言った
おばさんもいた
破廉恥なのか
私は多少の疑問を持ちつつ
ホームで電車を待つ間
ふと考える
カップルのキス
こんな些細な行為が
周囲に与える影響の大きさ
これはカップルのキスを見る人間の幸福度が
キスを不快に感じるか否かを左右してると
私は考えた
自らが幸福であれば
他者の幸福を喜べる余裕が
生まれると思うのだがどうだろうか
羨ましそうな視線を投げた男二人組も
それぞれ彼女がいれば
羨望の視線を浮かべないと思うのだ
おばさんも若気の至りだろうと
割り切れるだけの心の余裕がないのだろう
この街に蔓延する浮かれた人間たちは
余裕のない人間からは
さぞ恨めしく映るのだろう
世の中は実によくできてる
今日もこの街の幸福の天秤は
見事に釣り合ってるのだろう
次にカップルのキスを
目撃した私はなんて思うのだろうか
破廉恥だと思うだろうか
恨めしいと思うだろうか
羨ましいと思うだろうか
若気の至りと思うだろうか
その時の自分の幸福度が
他者の幸福を見ることでわかるということは
自分以外のすべての他人が
自分を量るものさしになりえるということだろう
また一つ楽しみが増えた
明日カップルのキス現場を探しにいこうか
不快感は抱かないだろうが
彼女が欲しいくらいは思うかもしれない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます