第6話 とあるランチから見えるもの
私がとあるイタリア料理店で
食事をしていた時の話だ
ランチ終了ギリギリで入店し
素早く注文
ギリギリだったと
ドリンクをもらい
ほっと一息
2時半過ぎだというのに
店にはそれなりの客がいた
数人の外人と
スーツ姿の中年
若いカップル
そして女性二人組
私の隣で食事をしていた
その女性二人組に
私は自分と彼女たちとの感覚のズレを
これでもかと見せつけられた
彼女たちは
私には多少厚めに見えるほどの化粧をして
向かい合っていた
向かい合ってたけれども
それは体の向きがそうなっていただけで
顔は決して向き合ってはいなかった
顔は俯き
自らの手中にある
スマホを見ていた
スマホを見ながら
スマホに向けて声を放つ
まるでスマホに向けて
放つような声や言葉
これで彼女たちは会話をしていた
彼女たちはほとんど
お互いの顔を見て話さない
スマホを見ながらの会話
最近の若い連中の悩みの一つに
人間不信や人間関係の希薄さを
挙げるものがいるが
私はこの二人の女性を見て
その悩みは当然だと確信した
その二人の化粧の厚みだけ
二人の距離は遠いと
私はそう感じた
私は極力
男女問わず
他者と会話するときは
目を見るようにしている
他の作業をしていても
定期的に相手の目を
見るようにしている
口は嘘を放つ
耳は不快を嫌う
手は嫌悪を教える
だが目は多くを語らず正直だ
だから他者との会話では必ず目を見る
若者はこれをしないから
人間関係の希薄さを悩むのだろう
現代の街が織りなすもの
作られていくイメージ
便利さを追求する人
パスタを口にしながら
スマホを見ながら会話する
彼女たちは
街が産み落とした
未熟児に他ならないと私は感じた
「お待たせしました」
店員さんが持ってきた
注文したパスタを見て
これ以上考えることをやめた
いただきます
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