第2話 ある本屋のお話

一つの店がある

本屋だ

どの時代にもケチなやつはいる

買わなくて中身がわかるなら

それに越したことはない

故に立ち読みが横行する

金を払う気はないのだ

中身をじっくり読めるから

注意されれば

その店にひっそり罵声を浴びせ

罪意識なく立ち去る

その背中は傲慢さと

履き違えた正義感すら見える

ここまで堂々とされると

店側も困る

故にその店は

商品の本にラッピングをして

読めないようにした

そしたらたちまちのうちに

立ち読みするやつは消えた

だって読めないんだから

そして客も極端に

その姿を消した

読めないから

来なくなるのだ

わかったことは

最初から買う気で来るやつは

いなかったということ

外から見れば

それなりに客がいるように見えたが

ついに片手の指で収まる程度になった

なんと正直なことか

これが

この街の正直さの一つだ

なんとも残酷なものだ

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