ロリロリアイドル、アダルトにカフカ
@nekogamikennsinn
ロリロリアイドル、アダルトにカフカ
「それでは次の曲! 聴いてください、『ミズイロ・アフタヌーン』」
観客の沸く声がライブハウス中に広がる。
水色ありすは人気アイドルユニット【類推キャロライン】の一人だ。彼女は双子の妹で
ある水色みくと二人でアイドルユニットを組んでいる。
「ありすちゃんかわいいよー!」
「みくちゃああああああん俺だああああこっちを見てくれえええ!」
二千人のライブハウスを埋め尽くす熱狂、今まさに【類推キャロライン】は隆盛を極め
んとしていた。
「「みんなありがとー!」」
【類推キャロライン】のアピールポイントは二人のどこからどう見てもそっくりな容姿
である。一卵性双生児というのもあるが、みくはそれに加えてさらにありすに似るように
変装をしている。マナカナ以来の大新星だとの声もあり、今をときめく時の人といっても
過言ではないほど、近頃は露出が増えてきた。
しかし、そんな彼女らにはある悩みがあった。それは胸のなかにかすかに存在するモヤ
のようなものだったが、その日のライブ終わりに最前列のA席から聞こえた声がそれを決
定づけるものにした。
「……最近なーんか物足りないんだよなぁ」
「二人とも十五歳で、かわいいんだけど、ちょっと大人っぽさが足りないというか……」
「はっきり言って、ガキ? 俺もう来るのやめようかなー」
常識のないイベンターのなかには人目にはばからず通る声で妙なことをひとりごちる者
がいる。今回はそれが舞台袖にいたありすの耳にたまたま届いてしまった。
~楽屋にて~
ライブが終わり、汗も拭き、着替えもすませ、後はバスの準備が整うのを待つだけの空
き時間。ありすは、みくにずっと胸にためていたことをつぶやいた。
「……わたしたちってさ、本当にお客さんを喜ばせてあげられてるのかなあ」
急にネガティブな口調で話しだしたありすにみくは戸惑った。
「なにいってるの、お姉ちゃん。今日のライブも大盛り上がりだったじゃない」
「確かに表面上はそう見えたけど、でも、わたし聞いちゃったんだ。一番前のお客さん数
人から、『大人っぽさが足りない』って。『もう飽きちゃった』って……」
「……」
きまずい沈黙が流れた。実はみくも、最近自分たちの中に何かが足りないということを
同じように感じていたため、即座に否定することができなかった。
「このままじゃいけないと思うの、わたしたち。今ノリにノッてると思うけど、だからこ
そ、その『大人っぽさ』とやらを手に入れて、さらなるブーストをかけていかないといけ
ないと思うのよ!」
「……そうね。確かにわたしもそう思う」
「じゃあ、どうしたらいいのかしらね、みく、何か思いつくことはある?」
みくは答えに迷い、首を傾げた。
「うーん、今すぐには思いつかないかなあ……ライブ終わりで疲れてるし、頭が働かない
よお」
「そっか……」
ありすは残念そうな様子を見せた。
コンコンコン。
「「はーい」」
ガチャッ。
「あ、どうもお疲れさまです」そう言って楽屋に入室してきたのは同級生でもあり、【類
推キャロライン】の現場マネージャでもある、帽子屋りこだった。
「あっ、りこちゃんお疲れさまー」
「ありすさんお疲れさまです。バスの準備が整いましたので、お呼びしました。もう出発
準備は出来ていますか?」
「あっはい、大丈夫です。いつでも行けますー」
「わかりました。では、先にバスでお待ちしておりますね」
バタンと音を立てて、りこは楽屋から出て行った。
「ね、今日はもうライブでへとへとだしさ、とりあえずそのことを考えるのはここまでに
して、明日またりこさんに相談してみようよお姉ちゃん」
ありすはうんと頷いた。
「そうね。リフレッシュしてからまた考えましょう。じゃあ、さっさと楽屋を出るわよ」
「はーい」
二人はライブハウスを後にした。彼女たちはその日、夢の中に落ちる瞬間まで「大人に
なるためにはどうすればいいのか」を考えた。
~学校で~
【類推キャロライン】のチーフマネージャであり同級生である三月愛兎は女装をして、
ここ鏡乃女子高校の女生徒として通学している。
もともと体の線が細く体型が女性的な彼は、さらに爆乳胸パッド、黒髪セミロングのか
つらを着けて、初見ではまず男性とは気づかれない風貌だ。
鏡乃女子高校には「女子高のため基本的に女性しか通学出来ないが、男性と周りに気づ
かれない程度の女装をしている場合は例外的に認める」という風変わりな校則がある。彼
はそれにのっとって特別に通学を認められていた。
なぜ彼は女装をしてまで女子高に通っているのか。それは【類推キャロライン】のアイ
ドル二人の身近でチーフマネージャとしての役目を務めるためだ。少しでも彼女たちのこ
とを知るためだ。あくまで仕事の一環として女子高に通っている。
そんな彼が問題にしていることがある。性的な問題だった。
ふと周りを見渡せば、うららかな女子高生が花園のように辺り一面に広がっている。
どこからかいい匂いも漂ってくる。
ある女子は無防備にスカートをめくって下敷きで扇いで下半身の汗を乾かそうとする。
またある女子は体育の授業で遠慮なくおっぱいを揺らしまくる。女子高としては普通の光
景だが、健全な男子からすれば相当な生殺しだ。もちろん、不純異性交遊は校則で禁じら
れている。
毎日のように目に毒、というより硫酸をぶっかけられているようなものだった。人並み
に性欲のある彼はリビドーを抑えることに日々強烈なストレスを感じている。オナニーの
回数も当然増えて、体力が落ち、仕事の負担になっている。
この辛さをどこかで発散出来ないか、なんならなにかをきっかけにこのうら若き乙女た
ちとセックスすることは出来ないだろうか……。
いつものようにそんなことを考えていた昼休みの時だった。同級生で現場マネージャの
りこから、ありすとみくが『大人になるためにはどうすればいいのか』という悩みを抱え
ていると報告を受けた。
「あありこ、ありがとう。じゃあこっちでまた二人と話してみるよ」
「あっはい。ありがとうございます。ではよろしくお願いいたします」
恭しく礼をして去っていくりこを見て、三月は誰かに見られないように悪い笑みを浮か
べた。いい考えが浮かんだのだ。
「お礼を言うのはこっちだよ、りこ……」
アイドルが「大人になるためにはどうすればいいのか?」そんなこと、昔から相場が決
まっている。
「セックスだ」
三月は思わぬチャンスに心の中で歓喜の声をあげた。あくまで仕事の一環だという言い
訳も忘れない。
~放課後、帰り道にて~
結局、二人とも学校にいる時にいい案を思いつくことが出来なかった。
「ねえ、みく」
「ん? どうしたの、お姉ちゃん」
「わたし考えたんだけど、やっぱり、大人のことを知るには誰かで処女を捨てるしかない
と思うの」
神妙な顔でありすはみくを見つめた。
突拍子もない発言に、みくは顔が赤くなるのを通り越して青くなった。
「え? え!? なに言ってるのお姉ちゃん、あり得ないでしょそんなこと、そんな、な
んでそんな結論に……」
「わたしは大真面目よ、みく。悪い芸能関係者がアイドルやグラビアのたまごを自分のも
のにするために言う常套句だけど、的は射てると思う。はっきり言って、処女ではいつま
で経っても大人の雰囲気を出すことは出来ない。どう考えてもそうなのよ」
急にとんでもないことを言い出した姉の両肩をつかみ、みくは必死になって説得をした。
「どう考えてもって……本当にそんな極端な方法しか残されてないの? もう一度冷静に
なって考えなおしてよお姉ちゃん!」
心から姉を説き伏せる妹の様相に多少心を打たれたのか、ありすは「うーん、やっぱり
駄目なのかな、他の方法を考えた方がいいのかな……」と言った時だった。
「その心配はないよ」
いつのまにか二人の背後にいた三月が二人の肩を片方ずつ軽く掴み、屈託のないスマイ
ルを浮かべていた。
「えっ?」
「あれっ、三月さん?」
急に背後から現れた三月に二人は驚きの声をあげた。
「二人の悩み、りこから聞いたよ。それと今の話も聞かせてもらった。僕はありすの案に
賛成だ。大人の雰囲気を出すためにはそれが一番手っ取り早くて、最適解なのは間違いな
いと思うよ」
「そ、そうかしら……」
みくは戸惑った様子だ。
「そうだよ。ついでに僕とすればいい。二人ともね。そうすればスキャンダルの心配は一
切ない」
三月はこれ以上ない名案だとばかりに、胸を張って二人に話した。
「そっかあ! いいじゃない、それは名案だわ! ね、みく」
一転して笑顔になったありすはみくの両手を掴んで、三月の3P案に賛成した。
みくは納得してない様子を見せつつも、ありすと三月の勢いに飲まれ、ついにその案を
認めることになった。
「……まあ、確かにそれなら私たちが処女を捨てることになるっていう点以外は良いかも
しれないわ。処女なんて持ってても仕方のないものだしね。周りなんてみんな中学生の時
には捨ててるみたいだし」
「そうよ、いまどきいつまでも初物の女なんて流行らないわよ。むしろ来るべき男性とす
る時に気を遣わせる障害にしかならないわ。たぶん」
「でも、いいの? お姉ちゃん。改めて聞くようだけど」
「なにが?」
「好きになった男性で処女を捨てるんじゃなくて、人生で一度きりしかない初めてをアイ
ドル活動のために捨てるなんて」
ありすが返答をする前に、三月が堰を切ったかのように答えた。
「みくちゃん、ありすちゃんもだけど、君たちはいまアイドルとして世間に羽ばたくため
の分け目の天王山にいるんだよ。ここで踏ん張ってアイドルとしての成長を果たせば、君
たちが一大スターになれるのは間違いないんだ。アイドル活動のために君たちが処女を捨
てることは決して悪いことじゃない。むしろアイドルとしての誇りを何よりも優先すると
いうとても誇り高い行為だ。旧約聖書に記されてるこんな話を知ってるかい? 神様はア
ブラハムに、愛する息子イサクを神様の生贄に捧げるように命じた。アブラハムは神様を
心から信じていたから、泣きながらそれをおこなったんだよ。そうして彼は成長したんだ。
何かを信じ続けるということは、何かを捨てることでもあるんだ。高みに登る人間は誰で
もやっている行為なんだよ。大丈夫。僕と君たちで【類推キャロライン】のこれからのた
めの大きな一歩を踏みだそうじゃないか」
必死である。テンション高めにもっともらしいことをマシンガンのように喋りかけるの
は詐欺師と上手い宣教師の基本テクニックだが、二人はそんなことは知らないので、素直
に感心した。
「三月さんがこう言うんだもの。しましょう。三人で、えっちを」
「……うん、お姉ちゃん、わたしも決めた。そうと決まれば三月さん、早く行きましょう。
さっさと処女を捨てて、わたし、大人になりたい」
二人で三月の手をとって、足早に歩き出した。向かう先は歓楽街として名高いK町だ。
そこのラブホテルに向かって三人は歩き出した。
「二人がアイドルに本気でマネージャの僕は嬉しいよ! ふふふ」
三月の笑みに含まれているものには二人とも気が付かなかった。
こうして三人は結ばれた。ラブホテルで彼女たちは三月の逸物で処女を捨て、三月も童
貞を捨てた。三人とも初めてだったのでぎこちないものではあったが、確かに彼女たちは
アイドルとしての未来のために、大人としての大一歩を踏み出したのだった。
~次回のライブ~
ジャーン。
「「みんな、ありがとー!」」
「最高だったよー! ありすー!」
「うわああああみくちゃん最高だああああ結婚してくれええええええええ」
二千人を満員にして、その日のライブも大盛り上がりだった。
ライブ終わりに最前列のA席の人間がつぶやいた。
「なんか、色っぽかったな、今日のライブ」
「ああ、変わったよ【類推キャロライン】。十五歳なのに大人のフェロモンがむんむん
だったというか、エロかったぜ」
「あの時ファンやめるとか言ってごめんよー! 一生ついて行くよ【類推キャロライン】
!」
前回のライブとは打って変わって聞こえてくるのは絶賛の嵐。中には「もしかして、ヤ
ったんじゃね?」と言う声も聞こえてきたが、それも「はあ? なに言ってんだお前ブッ
とばされたいのか? 十五歳の女の子がセックスなんてする訳ねーだろうが!」という純
粋な援護の声でかき消されていた。
舞台袖で聞いていた二人は口に手を当て、お互いに喜び合った。
「やったねみく!」
「やったねお姉ちゃん! やっぱり処女を捨てて正解だったよ。聞いた? 『大人のフェ
ロモン』が出てるって!」
「聞いた聞いた! みく、これからのライブ、もっともっと頑張ってお客さんを喜ばせて
いこうね!」
「うん!」
「ところで、今日はどうする?」
「もちろん、今日も三月さんとたくさんセックスしましょ!」
「うん! オーラルの方ももっと習っていかなきゃね! お客さんの精液を搾り取るつも
りで取り組んでいくわ!」
二人は以前とは見違えるようにエロくなった。
大事なのは過程ではなく目的に対する結果。二人はそれを身体で学んだ。
【類推キャロライン】がこれからどんどん上に向かって羽ばたいていくのは誰がみても
間違いない。
「でもこの先、三月さんで満足出来なくなったらどうしましょう」
「そしたら三月さんには辞めてもらいましょう。もっと精力があってイケメンの男性をマ
ネージャにするの」
「さすがお姉ちゃん! 大賛成っ!」
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