第4.5話 *******

「おい!やっぱりおかしいぞ、これはとんでもないエラーだ!何者かがしている!」


再び男がキューブ状の暗い部屋に飛び込んできた。額には大量の汗をかいている。酷く焦っている様子だった。


「少し落ち着けよ、オーギュスト。お前のそういうところ、悪い癖だぞ。」


「んな呑気なこと言ってる場合じゃねぇだろうが!」


部屋に入って来たオーギュストと呼ばれる男は、部屋で機器を操作していた男に諭され、より一層焦りを露わにした。


「レンブラント、実動のお前にやり直しを持ちかけたのは悪かったがなぁ、こりゃあもう無理だ!下手したら…死ぬぞ。もし仮に上手くいったとしても、介入者にこの先目を付けられるのがやばいってことくらい、お前にならすぐにわかるだろう!」


オーギュストにそう言われながらも、狐目の男、レンブラントはモニターに黙って向かい続けている。


「危険性は十分理解しているさ。」


「だったら、もう…」


「いや、俺はまだ続けてみようと思う。」


「………!!!」


「こんな、エラーが介入したのはそりゃあ初めてだが、こんなにスムーズに事が運んだのも今回が初めてだ。俺は今回の実験、最終フェーズまで様子を見るべきだと思う。」


レンブラントはオーギュストに向かって、背中越しにそう告げた。オーギュストは絶句した。こうなったらこの男は何を言っても意見を曲げることはない。それを、オーギュストは長年の付き合いから誰よりも知っていたからだ。彼は黙って振り返り静かに部屋を出ると、なるべく音を立てないようにドアを閉めた。


オーギュストはドアの外でつぶやく。


「レンブラント、お前がそういうつもりなら俺の方も勝手にやるぜ。」


彼の言葉が、レンブラントに届くことはない。キューブ状の部屋は外界の全ての音を遮断していた。


部屋に残ったレンブラントはキーボードを叩き続けている。彼も、またオーギュストが退出し、一人きりとなった部屋の中でつぶやく。


「ようこそ、12回目の『碧の箱庭』へ。ち…、おっと。今は『あお』だったか。さあ、あお。お前は世界を救うんだぜ。」


レンブラントはニヤリと笑った。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

碧の箱庭 夏木 葵 @katekin10

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ