第3.5話 *******
そこはキューブ状の部屋の中であった。暗い闇の中におびただしい数の電子パネルや機材たちが佇んでいる。それらの中の一部は執拗に点滅を繰り返し、まるで生きているかのように感じられた。
「なんだ、あの女は。」
突然部屋に入ってきた男が言った。男は二十代後半から三十代前半であろうか、口元には無精髭を蓄え、黒縁眼鏡をかけていた。
「ああ、まったく。予想外ってのはこういうことを言うのかな。」
兼ねてから部屋の中にいた男が言った。男は先程の男と比べて幾分若かった。その狐のような右目の下には二つのほくろが並んでいた。
「っても、このまま様子を見るしかないな。今のところ彼に影響があるようには見えない。」
部屋にいた男は入ってきた男の方を振り返って言った。
「馬鹿野郎。こんなエラーコード、ここに来て初めてだ。前例がない。前例がないってことは、なにが起こるかわからない。なにが起こるかわからないってことは、対処のしようもない。もう一度最初からやり直すか。」
入ってきた男は自分の髭を撫でながらぐちぐちと呟いている。
「お前、それこそ馬鹿野郎だ。実動はオレなんだ。どれだけキツイと思ってんだ、これ。とにかく、このまま様子を見る。」
「ちっ、好きにしろ。」
「あと、」
「なんだ?」
「面白いじゃないか。なにが起こるかわからない方が。」
部屋にいた男がそう言い放った途端、入ってきた男は勢いよく部屋を出た。扉を閉めるその態度からは、湧き上がる怒りが感じられた。
「さーて、楽しませてくれよ。今回こそは。」
部屋にいた男は機材たちの方に向き直った。そのうちの一つにはあおたちの居る夜中の砂浜が映し出されていた。
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メーデー、メーデー、エラーコード確認。コードネーム:うみ。経過観察で対処する。
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