【プロローグ2】スティル アイ ラヴ ユー!

・《告白相手は私ですか!?》

「あの…。」


初夏の日差しが、木々の間から光を覗かせる。


それはまるで、少女を応援しているかのように、ピンポイントで姿を照らし出していた。


そう、それは出会いと別れの季節…とはいえない、春も終わろうという五月上旬。


ゴールデンウィーク中にも、体育祭準備で登校となったそんなある日。

木々が多く茂る体育館横で、少女は今まさに勇気を出そうとしていた。


「あ…あの…。相川さん…私…。」


少女の顔は、隠しきれないほどに赤く染まっている。


体育館裏、そしてなにか深刻そうな顔の少女。

ここまで揃えば、発せられる言葉は一つしかないだろう。


「私…今まで相川さんのこと、ずっと見てて!その…どうしても伝えたくて!」


少女の目は、優しい笑みを浮かべる相手を捉えて離さない。


「私、相川さんのこと…。中学生の頃から好きで!その、付き合ってください!」


意を決し、少女は放つ。

彼女の思いをありのままに。


しかし、それを受けた相川と呼ばれた生徒はゆっくりと微笑み、告げる。


「貴女を、そんな風には見れないかな…。」


「そ…そんな…。」


「ごめんね。」


少しはにかみ、謝る仕草を見せる。


その行動には一種の慣れというか、余裕すら見えていた。


「相川さん…何で…。私じゃだめなの?」


「何でって聞かれても…。」


呆れたような顔をした『彼女』は、ハッキリと少女に告げようとした。


「だって 『私』 は―――――――――――」



『カシャカシャカシャ!』



「って…誰!?誰かいるの!?」


相川と呼ばれた少女の後ろの茂みから、カメラのシャッター音のようなものが聞こえてきた。


「……しまった。音が出てしまった…。」


「財団!?アンタそこで何してんのよ!?」


「……いっけね!ズラかるぜぇ!」


「コラ!待ちなさい!財団!それどうする気よ!」


財団と呼ばれた”未確認覆面生物”を追いかけ、走り去って行く相川と呼ばれた少女。


「え…な…なに?なにこの感じ…。」


そこに残されたのは、やんわりと恋を終わらせられた少女の姿だけだった…。



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